第4話 スポーツ大好き後輩女子の灯ちゃん①
準備室で色々とあったその後。 授業中や休み時間に鹿島さんがちらちらと俺の事を見てくるようになっていた。 これやられる側になって気が付けたんだけど……普通に見られてる視線ってわかるもんなんだな。 多分鹿島さんは俺が見られてる事に気が付いてるだなんて思ってないだろうけどさ。
(……あ、あれ? ってことは……)
俺も普段から女子の足とか胸とかをちらちら見てたんだけどさ……あ、あれ? もしかしてああいうのって女子にバレてたのか? そう思うとぞっとするんだけど。
(これからは気を付けよう……)
夢の中でも新たな気づきを得る事が出来た俺なのであった。 まぁ気を付けるといっても実行出来るかどうかは別問題だけどさ。
◇◇◇◇
そんなわけで授業が全て終わった放課後。 もしかしたら鹿島さんに声かけられるかな? って思ったけど、鹿島さんは既に教室にはいなかった。 鹿島さんのバッグは机にかかったままだから部活にでも行ったのかな? まぁいっか。 俺は特に気にせず自分のバッグに荷物を詰めていった。
「葵君、今日は部活無いよね? 良かったら一緒に帰らない?」
「あぁ、いいぞ」
雄二からそんな言葉をかけられたので、俺は頷いて荷物を入れたバッグを手に持って立ち上がった。 そのまま帰ろうとしたら後ろからトタトタと走る物音が聞こえ、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「先輩ー」
「……ん? おう日笠じゃん」
俺を呼んだ声の持ち主は日笠灯という後輩の女子だった。 日笠は女子サッカー部に所属しているスポーツ少女で、見た目は155センチのスレンダー体型、髪型はショートカットにしている爽やか女子だ。 そして名前の通りとても明るい子で、元気が取り柄みたいな感じの子だった。
そしてそんな日笠と俺は同じサッカー部所属だったので、沢山話す間柄という訳では無かったけど、まぁ仲はそれなりに良かったと思う。 この夢の世界でも同じかどうかは知らんけど。
でも日笠から話しかけてくれたって事は、多分この夢の世界でも俺と日笠はそれなりの仲なんだろうな。
(うーん、でもなぁ……)
でもここは貞操概念が逆転している世界なんだ。 それにさっきの鹿島さんを思い出せ、あの子は完全に思春期全開ドスケベ男子学生の女子verになってたんだから。
(じゃあ日笠も?)
俺は喋りかけてくれた日笠の事を見つめてみた。 うーん、見た感じはいつもと変わらないように見えるけど……
(でもさ……エロくない男子高校生なんているか?)
答えは否。 そんな輩いるわけない。 男子高校生は基本的にスケベな奴とムッツリスケベな奴の二種類しか存在しないのだから。 という事はやっぱり日笠も……?
「え、えぇっと……? ど、どうしたんですか先輩?」
「あ、い、いやすまん。 なんでもないよ」
しまった、あまりにもじろじろと日笠の事を見すぎてしまった。 日笠は怪訝そうな顔でこちらを見てきたので、俺はとりあえず謝って話を元に戻した。
「それでどうした日笠? 何かようか?」
「……え? せ、先輩何言ってるんですか? 今日の放課後に部活の備品買いに行こうって誘ってくれたじゃないですか」
「え? 誘った? 俺がか?」
日笠はそう言って顔をムっと膨らませてきた。
「ちょ、ちょっと先輩! 自分から誘っておいて忘れてるんですか? あ、それとも……も、もしかして都合悪くなったとかですか……?」
「えっ?」
ムッとした表情から一転して日笠の目が曇り出して不安そうな顔をしだした。 いくら夢の中だとしても、いつも明るい日笠がこんな悲しそうな顔をするなんて思わなかったので、普通にビックリしてしまった。
「あーいやごめん、すっかり忘れてたみたいだわ、本当にごめん。 大丈夫だから今から行こう日笠」
「あ、そうなんですね。 それなら良かったです、ほっ……」
「本当にごめんな日笠。 あー、というわけで、すまん雄二、そんなわけだから先に帰ってくれ」
「あ、うんわかった。 それじゃあ先に帰るね。 日笠さんもじゃあね」
「あ、はい。 お疲れさまです志摩先輩」
そう言って雄二は先に教室から出て行った。
「んじゃあ、俺達も行こうか。それで? 俺ら以外には部員は他に誰が来るんだ?」
「……え? 私達二人だけですよ……?」
「え? そうなのか?」
他にも一緒に行く部員がいると思ったら……まさかの日笠と二人きりだとは思わなかった。 さっきの鹿島さんといい、今の日笠といい、なんだか今日はやたらと女子と二人きりになる状況がくるな。 まぁいいや、深い事考えるのやめよう、どうせ夢だし。
それに備品を買いに行くだけとは言っても、女子と二人きりで行くってのはある種のデートみたいなもんだろこれ。 ならせっかくだし楽しもうぜ。
「……というかそもそもだけどさ、備品って何を買いに行くんだっけ?」
「あ、それは先輩から購入リストのメモ受け取ってますから返しますね」
「おう、ありがと」
俺は日笠から購入する備品リストを受け取った。
「……あぁ、確かにこれなら二人で買いに行ける量だな。 じゃあさっさと行こうぜ」
「はい!」
そう言って俺達は一緒に教室から出て行った。 備品を購入するスポーツセンターは学校から徒歩で15分くらいの場所にある。 なので俺と日笠は目的地までは歩いて目指すことにした。
「聞いてくださいよ先輩! 実はこの間授業中に……」
「おう」
……
……
「あ、昨日のテレビなんですけど、あれ見ましたか? あのバラエティの……」
「おう」
……
……
「そういえばもうすぐ中間テストですけど先輩はどうですか? 私は……」
「おう」
……
……
「先輩は好きな季節とかありますか? 私は……」
「お、おう?」
(あ、あれ……?)
目的地のスポーツセンターに行くまでの道中、日笠はやたらと俺に話しかけてくれていた。 いや元から日笠は話しかけてくれるタイプだったけど、それにしてもいつも以上にだ。 でもなんだろう……なんというか……
(う、うーん?)
なんだろうこの違和感は? 日笠は俺に向けて沢山話しかけてくれているのはわかる。 それはとても嬉しいよ。 嬉しいんだけどさ……なんかせわしないというか、落ち着きがないというか……テンパっているというか……あれ? 日笠汗かいてないか?
(……え!? も、もしかして緊張してるのか? な、なんで!?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます