第2話 クラスメイトの鹿島さん②
「ちょ、ちょっと待って倉橋君!」
「うん、どうした?」
「あ、あの、そ、そのさ、手を握られたままなのはちょっとその……えぇっとさ……」
「え? もしかして嫌だった?」
「い、嫌じゃないけど!」
鹿島さんの手を掴んだまま俺は廊下をスタスタと歩いていた。
せっかく夢の中なんだし、俺は普段出来ない事をして楽しもうとしていた。もしこれが現実だったらいきなり女子の手なんて握ったら怒られるに決まってるもん。
しかし何故かしらんけど、ちょうど良くこの夢は貞操概念が逆転しているし、なんだか俺にとって都合良すぎる展開だなぁ。
「じゃあ別に手を握ったままでもいいよね? ほら、早く準備室に行こう!」
「わ、わかったから! わかったって!」
俺はそう言って鹿島さんの手を握ったまま準備室の中へと入っていった。
「よし、じゃあさっさと準備して教室戻ろうか!」
「え!?」
俺はそう言って鹿島さんの手を離した。
すると鹿島さんはビックリした様子でこちらを見てきた。それはまるで話が違うじゃないか! と言ってるような目つきだった。
「どうしたの鹿島さん?」
「え? えぇっと、その……あ、あれは……」
「うん? あれって何?」
「そ、それはさ……え、えっと……な、なんでもナイデス……」
やはり思春期童貞の俺と同じようにヘタレ属性も兼ね備えているらしい。
なんだか鹿島さんが可愛らしくヘタレてる姿を見てると何故だかキュンと来るものがあるな。
「で、でもどうしたの倉橋君? なんかいつもと雰囲気が違う気がするんだけど」
「うん? どういうこと?」
「いやなんていうんだろう……倉橋君ってもっと真面目な感じだった気がするんだよね」
「あぁ……」
やっぱり前までの俺は、雄二がさっき言ってたように、素直で真面目な感じの男子学生だったらしい。 それだと結構お堅い性格だったのかな?
それじゃあ前の俺は女子との交流もあまりしてこなかったんだろうなぁ。
「だ、だから倉橋君に手を摑まれるなんて思ってなかったからさ……その、ビックリしたというかなんというか……」
「でも鹿島さん、手を離したら逃げちゃいそうじゃん」
「そ、そ、そそそんな事ないよ!? わ、わたわたしめっちゃ真面目だよ?」
「え、鹿島さん真面目なの? 真面目なのにおっぱい触りたいの?」
「ち、ちがっ!? あ、あれはその……じょ、冗談じゃん! 倉橋君冗談を真に受けすぎだって!」
鹿島さんはそう言って早口で喋り出した。何だか女子にちょっかいをかけてたら怒られてる男子みたいな感じになってる。
「ふぅん? じゃあおっぱいは触らなくてもいいんだね」
「え゛っ゛!?」
「え? 触りたいの?」
「い、いや! そ、その……さ、あ、あはは」
鹿島さんはどんどんと挙動不審になっていていった。そして俺はそんな光景を見ていて何かを思い出しそうになった。
えぇっと……あれは……あ、そうそうわかった! この挙動不審具合は、女子から義理チョコ貰った時の雄二と俺の反応にそっくりだ。
「チョコ欲しいの?」「え、えっと……その」「うん?どっちなの?」「あ、あの、ほ、ほしいです!」っていうやり取りをしたのを思い出した。
本当はチョコが滅茶苦茶欲しかったのに、恥ずかしくてすぐに言えずにどんどんと挙動不審になったあの日を思い出した。
いやでも仕方ないじゃないか、数少ない女子と触れあえる貴重なイベントは思春期童貞に効くんだからしょうがない。
(……あれ??)
それじゃあもしかしてさ……“あの煽り言葉”ってこっちの世界だと……こうなるのかな?
「何だか鹿島さん処女みたいな反応してるね」
「は、はぁ!? しょ!? しょ、しょしょしょ処女ちゃうし!」
……あぁわかった。やっぱりこの鹿島さんは、前の俺の女子バージョンなんだ。思春期の男子高校生の女子バージョンってわけね、あーはいはい完全に理解したわ。
「……あはは!」
「な、何で笑うの!? 違うって言ってるじゃん!!」
いやでもそうなるとこの夢かなり面白いかもしれないな。色々と楽しい事が出来るんじゃないか?
「ふ、ふん! こ、こう見えて私は……そ、その、エ……エッチだって滅茶苦茶上手いんだからね! もう色々な男をとっかえひっかえしてきてるんだから! ほ、本当だよ! だからしょ、処女なんかじゃ無いんだからね!」
「はいはい、わかったって、あはは」
「し、信じてないじゃない!! ふ、ふん……! そ、それに……く、倉橋君こそどうなのよ?」
「俺?」
「えぇそうよ。私の事をなんだか馬鹿にしてるけど……倉橋君こそどうなのよ? どうせ……ど、ど、ど童貞なんでしょ?」
「あぁうん、俺は童貞だよ?」
「ほ、ほら! や、やっぱりね! だって真面目な倉橋君だもん! そうに決まって――」
「でも童貞は早く卒業したいなぁ」
「っな!?」
そんな言葉が飛んでくると思っていなかったようで、鹿島さんはビックリしたようにして顔を赤らめた。
「あ、でもさ、鹿島さんエッチ滅茶苦茶上手いんでしょ? そんなに上手いんだったらさ……俺の童貞貰ってくれない?」
「な゛っ゛!?」
俺がそういうと鹿島さんは完全に動きが止まった。そして顔もどんどんと真っ赤になっていった。
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