第8話 部屋

(昼花火 ドーン バーン)

「監督。いよいよ今日からインターハイ予選が始まります。3年間の練習の成果を見せつけてやりましょう。みんな!締まっていくよー!」


大声「グルガングン魂ーーオーー!!!」


「さて、受付をしてきますね。ゴソゴソ、あれ?ゴソゴソゴソ、あれあれ?

 ぎゃー!!受付票を家に忘れてきてしまいましたーーー!!これでは大会に参加できません。

 今、家まで取りに戻れば、まだ間に合います!そのためには監督に車で送っていただく必要があります!

 迷っている暇はありません!さっ、行きましょう!みんなは練習して体温めておいて!」


(車の音 ブーン)

「ほら、監督も家に入って一緒に探してください。時間が無いんですからね。ここが私の部屋です」

(扉を開ける音 ガチャ)

「あ”ー!乾いた洗濯物を畳まずにベッドの上へ置いたままだった。こっち見ないでくださいね。洗濯物をお布団の中に隠しますから。

 これで良しっと。監督は、こっちの机の方を探して下さいね。私は押入れの方を探しますから。

 どこかなー?ないなー?早く探し出さないと試合始まっちゃうよー。

 あーここでもない。

 うーここでもない。

 おーこれは!!昨日買ったお菓子に付いてたオマケのフィギアだ。この色遣いが美しくて、斜め下から見たこの角度が一番綺麗に見えるんだなー、、、って。こんなことしている場合ではなかった。監督!ありましたか?え?まだ?早くしてください!遊んでいる暇はありませんよ!」


(家の扉が開く音 ガチャ)

「あら?誰か来た。ん?あっ!そういえば今日はパパが夜勤明けの日だった。これはまずいですよ監督。パパは警察官で、私のことを溺愛しているから、男の人を部屋に入れているのを見かけたらカンカンに怒られてしまいます。それに、もしかしたら、監督、逮捕されちゃうかもです。


むむむむっ。むむむむむむっ。


 ここは一旦、隠れましょう!私のベッドの中に入ってください。あーでもここはさっき、洗濯物の下着やらを中に隠したんだった。でも、ここしかないし。仕方ない!

 監督、ベッドの中に隠れて目をつむっていてください。いいですね。」


(廊下から足音が近づく ドタドタ)

(千夏が自分で部屋の扉を開ける ガチャ)

「あら、パパ。おかえりなさい。私?これからバスケの試合に行くところよ。頑張ってくるわね。

 え?玄関に知らない男物の靴?あー、、あれね、、、あれは、、、そのー、、、あれよ、、弟の春太郎が最近買ったやつよ。そうよ、この前、自慢してきたから間違いない。じゃあ、私急いでるから、この辺で。

 え?ベッドの布団が不自然に膨らんでいる?や、、やだなーパパ、、これはあれよ、、ほら、、、さっきまでお布団干してたから、太陽の力でほら、こー、ふぁーっと、ふぉーっと、イースト菌的にいい感じに膨らんだのよ。これで夜もぐっすりね。

 パパも夜勤明けで疲れているでしょ。もう寝た方がいいわよ。じゃあね。

(部屋の扉を閉める音 ガチャ)


小声「監督ー。もう出てきてもいいですよ。やだっ!監督の顔に私のおパンツが。ずっとその状態でいたんですか?恥ずかしーですぅ。いつまで顔に付けているんですか。もぉー返してくださいよぉー。

 あっ!ありました!受付票!ベッドの中にありましたよ。そいえば昨日寝る前にベッドの中で、ずっとこれを眺めて3年間を振り返っていただっけ。さー受付票も見つかったことですし、会場へ急ぎましょう!でも、家の中では、慎重にゆっくり、音を立てないように、急いでくださいね。



(試合終了間近 両チーム声援の声 ワァーーー)

「あと3点取れば逆転よー!最後まで気を抜かないでー!あきらめないでー!

 由香ナイスカット!ボールちょうだい!!ラスト5秒!ブザービートよ!


 それっ!はいっってーーー!!!」


(試合終了のブザー ビーーー )

(ボールがリングに当たって跳ね返される音 バイーン )

(ボールが床に落ちで跳ねる音 ダムダムダダダ。。。)


(相手チームの歓声と味方チームのため息 オォォォーーー ワァーーー)


「負けた・・・。みんな泣かないで!胸張って!最後までよく戦ったわ!応援してくれた学校のみんなと、父兄の皆さまに挨拶行くわよ!」


「整列!応援、どうも、ありがとうございましたーーー!」

(暖かい拍手 パチパチ)


「まだ泣くなー!監督へもお礼のあいさつ行くよー!

 監督!ご指導、ありがとうございましたーーー!」


「解散!ヨシ!泣けーー!!」


(学校へ帰ってきて部室に一人でいる千夏の所にノック コンコン)

「はい。ん?監督。私を慰めに来てくれたんですか?べ、別に私は泣いたりなんか、、泣いたりなんか、、、

 ウェーーーーン!!!ヒッッ、ヒッッ、ヒッッ

 悔しいですぅ。ヒッッ、

 悲しいですぅ。ヒッッ、

 でも、一生懸命やりきりました。ヒッッ。

 監督~。そんなに優しく包み込んでくれたら、涙が止まりませーん。

 ウェーーーーン!

 監督のジャージがヒッッ、

 私の涙と鼻水でヒッッ、

 汚れちゃいますよーーー!

 ウェーーーーン!

 ダメにしちゃったらヒッッ、

 また一緒にヒッッ、

 買いに行きましょうねヒッッ、

 ウェーーーーン!」


「ヒッッ、ヒッッ、グスン。

 あー泣いたらスッキリした。もう大丈夫です。いつまでも泣いてなんかいられませんからね。それと、私、この大会が終わったら、監督に言いたいことがあったんです。このまま私を包み込んだまま聞いてください。

 あの、その、監督とは短いお付き合いでしたが、一緒にいた時はなんだか、とても楽しくて、ワクワクして、ドキドキして、、、

 特にこうして監督と密着しているときは、体が芯から熱くなって、

 今も、熱を持ってるの分かります?

 つまり、なんというか、私、どうやら、監督の事が、、、」


(部室の扉が開く音 ガチャ)

(千夏が監督を突き放す音 バシッ)


「あ、あれ?亜美。どうした?え?打ち上げのタコパ?

 う、うん、行く行く。追いかけるね。え?今すぐ?わ、分かった。

 監督。それじゃあ、ありがとうございました。戸締りご苦労様です。では失礼します」



(蛍の光 チャンチャンチャン)

(部室のカギを内側から閉める音 ガチャ)

「監督。部室に呼び出してすみません。私、卒業しちゃいました。本当は、試合後のあの日に言おうとしてたんですけど、結局言えないままになってたことあって。今日はカギを閉めたので、誰にも邪魔はさせません。


 あの、その、私、監督の事が、、、



おわり













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女バスの監督に就任した俺が、愚直なキャプテンと密着スポコンラブ? 団田図 @dandenzu

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