第3話 監督部屋

(夜中 フクロウのなく声 ホーホー)

(監督の部屋がノックされる音 コンコン)

小声「監督ー。もう寝ちゃいましたかー?ちょっと、相談いいですかー?」


(部屋の扉を開ける音 ガチャ)

「こんばんわ。こんなパジャマ姿ですみません。さっきは危機一髪でしたね。私、ドキドキが止まらなかったです。それに、お見苦しい姿までさらしてしまって、なんだかすみませんでした。

 ところで、どうしても相談しておきたいことがありましてお伺いしました。ちょっと、失礼しますね」

(部屋へ押し入り、扉を閉める音 ガチャ)


「あのー実は、もうすぐインターハイ予選が始まるというのに、部員のみんなが、真剣に練習に取り組んでくれていないようで、私、とても不安なんです。有紀なんて、髪の色を変えて他校の男子と遊んでるっていうし、涼子なんて、趣味のドラムを本気でやりすぎて手に豆作ってるっていうし。


『バスケットボーラーは手が命でしょうがぁ!』


って、髪を耳にかき上げながら言ってやりたかったのですが、そんな度胸もないわけで、、、私、キャプテン失格なんでしょうか?」


「もー聞いてますか?監督!ん?どうしたんですか?頭を横にしてトントンしちゃって。もしかして、耳に水入っちゃいました?でしたら、私が見てあげますよ。

 はい。監督は横になって、正座した私のヒザの上に頭を横にして置いてください。このパジャマはモフモフのフカフカ素材ですから、気持ちいですよ~。

 はい、できましたね、おりこうさんです。そうしましたら、ティッシュで紙縒こよりを作って、耳の中のお水を取ってあげますからね。じっとしててくださいよ。」


(右耳で柔らかいガサガサ音)

右耳元小声「どうです?聞こえますか?お水は吸い出せましたか?大丈夫そうですね。ついでに耳掃除もして差し上げますよ。もう少しじっとしててくださいね。くすぐったくても我慢、我慢ですよ」

(右耳で柔らかいガサガサ音)

右耳元小声「これでオッケーです。それじゃあ今度は逆の耳を見てみますね。そのまま寝返りを打って、監督の顔を私のお腹に向けてください」


左耳小声「はい、おりこうさんです。あら、監督の左耳はとってもかわいい形をしていますね。なんだかこう、食べちゃいたくなるような、甘そうな形です。おっと、余談でしたね。お掃除しますから、そのままじっとしていてくださいね」

(左耳で柔らかいガサガサ音)


「これでよしっと。終わりましたよ監督。それじゃあ私はこの辺でそろそろ、、、」


(突然の夕立 ザー 雷音 ゴロゴロォー)

「遠くで雷が鳴り始めましたね。明日晴れるといいんですけど、、、

 あら?どうしちゃったんですか監督?お布団なんかぶって。あっ、もしかして、雷が怖いとか?大丈夫ですよ。私が付いています。なんでしたら、手でも握っておきましょうか?こうやって。ムギュッと」


(ゴロゴロォーピシャーン)

「キャー!!近くに落ちましたね。さすがに今のは私も怖かったですぅ。ちょっと一緒にお布団の中いいですか?横、失礼しますね」


耳元小声「こうやって手を握って、寄り添っていれば怖くありません。雷が通り過ぎるのを一緒に待ちましょう。それにしても、監督にこんな弱点があったとは、かわいい一面もあったんですね。うふふぅ。

 大丈夫です。やまない雨はない。開けない夜もない。恐れとは人の心の中にある魔物です。その魔物退治を私がお手伝いしますから安心してください。

 ちょっ、ちょっと監督。そこは私の脇腹です。そんなにギュっとされると、くすぐったくて、はへへっ。はへへっ。

 監督。わざとやってませんか?悪さばっかりしてるとまた、雷が鳴りますよー」

(ゴロゴロォーピシャーン)

「ほらー、これはきっと、今日の坂道ダッシュで、体力づくりというの名の元に、私たちをいじめた罰ですね。うふふぅふぅ」


「さー雷様ー。このいじわるな監督に、さらなる天罰をー!」


(ゴロゴロォーピシャーン)

「キャー!!え?本当に来ましたよ監督!ひゃははは!!天罰をー!」

(ゴロゴロォーピシャーン)

「キャー!!ひゃははは!!びゃはははぁ!!天罰をー!」

(ゴロゴロォーピシ

「キャー!!ひ

(ゴロゴ

「キャ

・・


(朝 スズメの鳴き声 チュンチュン)

「監督!おはようございます。雷が去って私が自分の部屋へ帰った後は、ぐっすり眠れましたか?今日も一日ご指導よろしくお願いします。でも、しごき過ぎるとまた天罰が下るかもですよー。きゃははは」

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