The Worst Avenger
「うわああああッ‼」
回想シーンを終えて現実に戻った僕の目の前に広がっていたのは、血みどろかつ理解困難な光景。
「あのさ……何、怯えてんの? あんたを騙して(差別用語につき自粛)にした上に、笑いモノにしやがった外道の一味が死んだんだぞ。ちっとは喜べ。はい、スマイル♪ スマイル♪」
目の前に居るのは、セーラー服に日本刀の女の子。
「スマイル♪ スマイル♪」とか言ってる割に、口調は糞真面目。
黒いストレートのロングヘアは、光の加減で、時折、紫のメッシュが入っているようにも見える。
アメリカあたりのオタクにとっての「俺達が日本人に自慢されたい日本アニメ」そのものの姿だ。
「貴様、何者だッ⁉」
パーティーの仲間だった……お姉さん系魔法使いが、その叫びと共に魔法の矢を……。
放とうとする前に、喉に日本刀の切っ先が喉元を斬り裂く。
「残念だったな。これで呪文を唱えられない」
更に次の瞬間、魔王の咆哮。
走り出した魔王と女の子はすれ違い……あれ?
「ぎゃああああッ‼」
魔王の股間から血が吹き出し……。
「大丈夫、今、治癒魔法を……」
そう言ったのは、
「ま……待て……待ってくれ、傷口を塞ぐのは、玉が落ちてないか確かめてから……」
「はぁ? 何、言ってんですか?」
「ちょ……ちょっと……玉が無事か確認するのに、心の準備が……お願い、少し待って」
「何、呑気な事言ってんですか? 一刻も早く塞ぐ必要が有るのは、睾丸の傷じゃなくて、太股の傷です」
「へっ?」
「
「ど……う……し……た……?」
「治癒魔法を使ってんのに……傷が塞がりませんッ‼」
「な……なんで……?」
「わかりませんッ‼ ま……まさか……」
轟音。
魔王の出血は止まらず……やがて、魔王は白目を剥いて倒れ……。
魔王の巨体で、近くに居た村人が何人か押し潰された。
「そ……そんな……まさか……その剣は……あの呪われし神器『チートスレイヤー』⁉」
何で、日本刀の名前が英語なんだよ? あと、何だよ、そのSNSで炎上しそうな名前は?
「お前らが勝手に付けた呼び名など知るか」
そして、
「おい……お前が村長か?」
「は……はい……」
セーラー服の女の子は、村長に刀の切っ先を突き付け、そう訊いた。
「7年前に、7歳ぐらいの女の子が、この世界に攫われてきた筈だ」
「ごめんなさい。知りません」
「私らの世界で人攫いをやってる連中の居場所はどこだ? どうやって連絡を取ってる?」
「ごごごごご……ごめんなさい。部外者に教えたら、村人全員が皆殺しに……えっ?」
セーラー服の女の子は、村人達を次々を虐殺し始め……。
「わかった。村人達を皆殺しにしたら、言ってくれるのか?」
「やめて、やめて、やめて、やめて、助けて……」
「あ……あの……」
あまりの状況に、僕もツッコミを入れるしか無かった。
「何だ?」
「何で……
そう言って、僕は手首から先を斬り落された腕を持ち上げた。
「簡単な話だ……。私にとっては、あんたの生死など、どうでも良かっただけだ」
そして、僕の異世界での人生は終った。死因は出血多量だった。
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