異能。
仕事内容はたった一つ。
それはリソースの回収。
可能ならば
そうじゃなくても、
仕事の手付金として、エナの症状進行は完全に停止する。
そして成功報酬に『エナの筋ジストロフィー完治』が頂ける。
仕事道具としてある程度のリソースが支給され、そのリソースを使って異能を得られる。
もちろん、こっちは女神からの依頼を受けて仕事をするので、支給されるリソースを潤沢に使って得られる異能は現地民と比べても強力無比だが、それでも絶対無敵の最強無双能力って訳でも無い。
過去、調子に乗った転生者が普通に現地民からぶっ殺された事例もあると聞いたので、その辺は良く考えて行動しようと思う。
まぁ見ず知らずの権力者に膝を折るとか絶対嫌なので、精々その場で打首を言い渡されても抵抗出来るくらいの実力を身に付けて、そして暗殺に気を遣うくらいだろうか。
そういう意味では多分俺、異世界に向いて無いと思うんだけどな。
さて、それで貰える異能についてだが、ティエリアーナの世界では異能が二種類ある。
一つは
もう一つはパッシブ系能力、『
ちなみに、天稟はテンピンとも読めるしテンリンとも読めるが、俺は
「しかし本当に、支給するリソースを500しか使わないつもりですか?」
「それで事足りると思うぞ?」
コーヒーを啜りながら、何やら納得してない様子のティエリアーナに言葉を返す。
転生者には一律で一万ほどのリソースが貰えるそうなのだが、俺はその内500しか使わず、残り9500はエナに使って欲しいと契約に盛り込んだ。
異能なんて超能力を作れるエネルギーなら、妹を「超幸運にする」事だって出来るはずだ。妹の幸せのために使って欲しい。
リソースとはつまり神の力であり、使う量が多ければ多いほど有り得ない事を引き起こせる。
例えば、異世界転生系物語お決まりのスキルとしてアイテムボックスなんて物があるが、人の身で異空間を生成して物を収納し、さらに収納物の時間を停止する……、なんてのは明らかに神の領域にある超常現象だろう。
ああいった意味不明な能力が欲しいのなら、その分大量のリソースが要求される。詳しく言うとアイテムボックス系の異能はリソースを6000ほど持って行かれるらしい。
他にも、視界内ならば
無条件で物体の結合を切断する『絶対切断』なる
物体を構成するリソースその物にアクセスして情報を引っこ抜く『鑑定』の
任意で時間を停止する
物理、魔法に関わらず見ただけで全てを理解して模倣出来る『完全模倣』なる
剣の理を超越して、剣一本あれば地形すら変えられる斬撃を放てる様な剣術が身に付く『剣聖』または『剣神』なんて
いずれも、過去の転生者達がリソースを潤沢に使って作成した異能らしい。
ちなみに、契約では
そんな、四桁使えば世界の法則すら捻じ曲げる事すら叶う超パワーを利用して作った俺の異能が何かと言うと、
「異世界のバケモノでも、銃があれば大体なんとかなるだろ」
地球に存在する、もしくは存在した弾薬実包を魔力の消費で生成出来る
充分なチートに思えるかもしれないが、銃弾ってあれ、とどのつまり数グラムから数十グラム程度の金属片と
四桁使えば異空間を生み出して時間停止まで可能とし、剣を振れば野山を抉るような攻撃まで出来ちゃう超絶女神パワーを使ってまで生み出すのが、ちょっとした金属片と有機物。
そりゃリーズナブルだったさ。
そも、世界の全てがリソースで構成されているって言うなら、鉄も魔力も元はリソースなのだ。ならば魔力を消費して金属片を生み出すだけなら、そう大した異能では無いと言える。魔力をリソースに戻してリソースを金属に変えてるだけだから。
コレが『あらゆる物質を魔力で生み出せる万物創造』とかだったらもっと要求されたかも知れないが、生み出す対象を弾薬に限ったので400で済んだ。能力を限定すれば安くなる仕様らしい。
銃その物は生み出せないので向こうで作る必要がある。だが、それも鉄さえ有れば問題無い。いくらでもやりようはある。
と言うか、銃器に於いて、作るのが一番困難な物って弾薬なのだ。銃器その物は殆どの場合、人が思うよりずっと簡単な構造をしてるし、鋼材さえ手元にあるなら、特別な装置が無くてもヤスリ一本でライフルを作る事だって可能だ。
そして、その銃を作るのに必要だと思ったから
この異能は、見ただけでミクロ単位まで正確に測れる才能で、これは転生者特典で異能を好きに作った物じゃなく、これから行く異世界で現地民が普通に持ってるプリセットの異能だ。リソース消費は100で済んだ。
これで鉄をヤスリで削れば、見るだけでミクロ単位の計測をしながら加工出来るはずだ。リアルタイムで大きさを完璧に測りながら加工出来るとか最強だと思う。
鍛冶や
ミクロ単位で鉄の加工と言うと凄まじい才能に思えるが、ぶっちゃけ下町の町工場とか探せば素でこれが出来る
「じゃぁ、善は急げと言うし、そろそろ行くか。後始末は頼んだぞ」
「ええ、お任せ下さい」
本当なら色々と準備して、妹にも別れを告げてから行きたいが、コッチとアッチは時間の流れが違うらしく、なるべく急いで欲しいと言われてるので今から転生だ。
妹の病気はティエリアーナが進行を止めてくれるから、延命や先進医療に対する投資など、莫大な費用はもう要らない。
入院費だけでも結構かかるが、俺が稼いで貯めてある額を見れば三年は持つ計算だ。
他にも、俺の財産を良い感じに妹へ相続させる諸々や、その他の権利なんかも全部アフターケアとしてティエリアーナが処理してくれる。
なんか女神パワーで良い感じに、相続税も要らない感じに処理してくれると言うので、正直それは凄い助かる。億単位の相続税とか正直考えたくないからな。
「じゃぁ、行ってくる」
異世界へ行けばもう飲めないだろうブラックアイボリーを挽いたコーヒーを飲み終えた俺は、カップをテーブルに置いて、ソファーに深く沈むように体を預けた。
「はい、行ってらっしゃいませ」
笑顔のティエリアーナに見送られ、段々と視界が白く染まっていく。今まさに、神の力によって転生が実行されているのだろう。
こうして俺は、日本のとある雑居ビルの中で死んだ。
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