第28話 いざ、決戦の地へ
迎えた、一週間後。
俺と千陽は、空港の出発ロビーで登場する飛行機を待っていた。
休日ということもあり、空港の出発口は多くの観光客の姿で賑わっている。
俺はスーツに身を纏い、ピシっと引き締めてきた。
「ねぇ元気、本当に大丈夫?」
「ん? 何がだ?」
「だからそのぉ……」
千陽は何か言いたげだったものの、俺はふっと笑みを浮かべて彼女の頭へ手を置いた。
「大丈夫だ。俺を信じろ」
「うん……分かった」
俺の言葉に、千陽は頷いてくれたものの、心配は拭えない様子。
まあ、あの過保護な幸一さんと長年過ごしてきたからこそ、そんじょそこらじゃ折れない性格だと分かっているからなのだろう。
千陽が心配してくれるのは嬉しい。
けれど、俺はこの一週間で覚悟を付けてきた。
ここで怯むわけにはいかないのだ。
あとは、己の気持ちを存分にぶちまけるのみ。
ピーンポーンパーンポーン。
お客様にBNB670便のご搭乗のご案内を致します。
乗る予定の飛行機のアナウンスが流れ、俺と千陽は荷物を持って立ち上がった。。
「さぁ、行こうか」
「うん」
俺は千陽と手を繋ぎ、決戦の地へと赴くのであった。
◇◇◇
約二時間後。
意気込んでいた時期もありました。
「うぅぅ……怖かった」
「し、死ぬかと思った」
俺と千陽は、げっそりした様子で、目的地の空港へ降り立っていた。
飛行機を侮っていた。
今日は、大気の状態が不安定ということもあり、機内の揺れが凄くて、船酔いみたいな状態になってしまった。
その結果、二人して気分が悪くなってしまい、何とか戻さずに今に至るというわけだ。
「と、とりあえず、レンタカー借りに行こうか」
「うん、そうだね」
ひとまず、空港からは車で移動するため、事前に予約していたレンタカー乗り場へ。
受付を済ませ、車に乗り込み、ようやく一息つくことが出来た。
「ふぅ……やっと落ち着ける」
「だね」
「それじゃ、相手を待たせるわけにもいかないし、早速向かおうか」
「うん」
千陽に自宅の住所を入力してもらい、いざ出発。
久々の運転だから、安全第一で行こうと気を引き締める。
「ふぁーっ」
と同時に、助手席で盛大な欠伸をかます千陽。
「疲れたか?」
「へっ? ううん、平気だよ」
「もし眠いなら寝てていいからな」
「眠くないよ。ってか、この後のことが怖すぎて寝れないって」
「……そうか、まあそうだよな」
これから、今後の人生を揺るがすであろう挨拶を行うのだ。
千陽も自宅に帰るだけとはいえ、緊張しないわけがない。
「……上手く行くといいな」
「……だね」
「もしダメだったら、どうしようか?」
「その時は、そうなったら考えたらいいんじゃない?」
「まっ、それもそっか」
広がらない会話を時々かわしながら、俺たちは運命の決戦地へと向かって行くのであった。
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