第4話【カピバ=えぬてぃーあーる?②】


 虚無なのだ。


 何故なのだ、何故、よりにもよってモブ原なんかと付き合っているのだ。そ、そりゃぁ、人の勝手なんだけれど、でもやっぱり、なんか悔しい、のだ。


 バイトの時間も無駄に長く感じるし、シフトも被らないし、そうか、モブ原がバイトのシフトを決めているから、なのだ。


 そんな地獄の日々が続き、梅雨のシーズン。

 我の心は毎日の天気のようなのだ。


 一人自宅に到着。雨と湿気で自慢の毛並みも台無しな我の目に映ったのは、


「新人ちゃん?」

「えへへ……き、来ちゃいました」

「ました、のだ?」

「はい、ました」


 見れば新人ちゃん、雨で全身濡れているのだ。傘は……待ってないみたい、のだ。と、とにかく、このままじゃ風邪をひいてしまうのだ。

 うちに上がってもらって……


 ……でも、新人ちゃんはモブ原の彼女。勝手にうちにあげたなんてバレたら……

 ど、どどど、どーするのだ、我?


 いや、迷うところじゃない、のだ!


「新人ちゃん! うちのシャワーを使って! のだ」

「……は、はいっ!」




 ……シャワーの音。バシャバシャ。ジャー。


 オオオオオオオ……何故だか心拍数が。落ち着くのだ。下心め、我を支配するな、のだ!

 ハァハァ、ヒュー! よし、のだ。


 ……ジャー。キュッ。



「カピバラさん、シャワー、ありがとうございました」

「う、うむ。そ、それより、どうしてこんなところに? のだ。確か新人ちゃんは今日お休みだったのだ」

「そんなの、カピバラさんに会いたかったからに決まってます。だって私」


 頬を染めた新人ちゃんが続ける、のだ。


「だった私、カピバラさんが好きだから!」


 ん。


 ンガガーーーーーー!?


「カピバラ……さん?」


 ンガガガガガ!?


「……あ、私、ごめんなさい。いきなりこんなの、迷惑ですよね……わ、忘れてくださいっ! シャワーありがとうございましたっ!」


 新人ちゃんが慌てて背を向けるのだ。けれど、今度こそは、呼び止めるのだ!


「新人ちゃんっ! 我も! わ、わわ、わわわわ我⤴︎もっ! もも、ももも、もも!」

「桃?」

「我もっ……新人ちゃんが、す、すすす⤴︎」


 カピバラなのに。我、カピバラなのに、本当にいいのかな? こんなこと言って、いいのかな?

 のだ……!

 怯むな、のだ! 我は、


 我こそは! 


 カピバ=ランヴォルギーニャ!

 世界を支配する齧歯類のゴッド! ここで言わずしてどこで言うのだ!


「我も、新人ちゃんが好き、のだ!」



 ※彼女が出来たのだ!



 次回、モブ原との決着!?

 事の真相を聞いたからには、奴を許すわけにはいかないのだ! 退職上等のだ!

 彼女を泣かせたモブ原に挑む、のだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る