第3話【カピバ=えぬてぃーあーる?①】


 我、無敵、のだ☆


 あの夜、新人ちゃんと朝まで呑み明かした夜から、かれこれ一週間経過したのだ。

 連絡先も交換したし、同じシフトの日なんて目が合うと笑顔を見せてくれたりするのだ。天使! のだ。むへへへ、今の我ならモブ原にも勝てる!

 のだ。


「カピバラ⤴︎おい⤵︎? おめ、前歯出し⤵︎⤴︎てニヤニヤしやがって⤴︎よ、仕事せ〜〜⤵︎↑⇄⤵︎⤴︎いや」

「あ、モブ原さん、ちっ〜す、のだ!」


 モブ原の嫌味も軽く躱す我は正に無敵なのだ。


 仕事を終えて、こっそり新人ちゃんと会ったりする日も増えてきたのだ。新人ちゃんはいつも優しいのだ。モブ原に嫌味を言われた日も心配してくれるのだ。癒してくれる、のだ。


 そして今夜も、一緒に帰り道なのだ。


「新人ちゃん、今日は元気がないのだ?」

「カピバラさん、いえ……そんなことは……」

「そう、なのだ?」

「なのだ、です。そうだ、今夜は空いてますか? 少し呑みませんか?」

「のだ」


 久しぶりに新人ちゃんと呑むことになったのだ。

 適当な居酒屋チェーン店で他愛もない話をしたのだ。楽しい時間はすぐに終わってしまったのだ。


「新人ちゃん、そろそろ終電なのだ」

「……あ、はい」

「のだ?」

「あはは、ちょっと呑み過ぎちゃいました」


 かなり酔っているのだ。ここは我が介抱せねばならないのかも、のだ。

 店を出て駅まで送った頃には、新人ちゃんの酔いも少しマシになっていたのだ。


「私は大丈夫です、カピバラさん、今夜はありがとうございました」

「のだ。えと、新人ちゃ」

「あのっ……ぁ、えと……」


 さようなら、そう言った新人ちゃんの瞳に、街の光が映り、それはそれは綺麗で、でも、何処か……


 駅のアナウンス。最終電車なのだ。


 新人ちゃんは急いで我の前から去ってしまったのだ。我は、我は弱虫なのだ。





 その日から、新人ちゃんが我を避けるようになったのだ。シフトが被る日も減ってしまったのだ。


 そしてある噂を金魚の糞子達から聞かされることになった、のだ。


 新人ちゃんがモブ原と付き合っている、と。



 の、の、の、のだぁぁぁーー!!!?



 ※夜の繁華街を四足ダッシュで帰宅した、のだ


 つづく、のだ⤴︎⤴︎〜⤵︎↑⇄⤵︎⤴︎!!!!

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