第2話【彼女こそは麗しのカピバ=ヒロイン】
職場の飲み会とは、この世の『会』とつく集まりの中でも一、二を争う最もくだらない会のひとつである! のだ。
「それでよ⤴︎ぉぉ⤵︎おー⤴︎、このカピバラが⤴︎よ↑枝⤵︎豆↑を客の前でぶち撒けて↑よ⤴︎、なぁクッソドブネズミバラよ⤴︎⤴︎⤵︎↑⇄ぉぉ?」
酒が入って、いつにも増してコマンド数が増えているのは言うまでもなくモブ原だ。バイトリーダーだかなんだか知らないけれど、
畜生、畜生、ちっくしょぉぉぉん!
「キャハハ波波波ーー! モブ原さんってば、おーもーしーろー胃ィィーー!」
「ちょっとカピバラ〜? モブ原君のビール切れてんじゃん。気ぃつかえよ、齧歯類のくせに。あ、店員さん♡生ひとつ追加お願いしまぁ〜す!」
黙れブス共! 頼むなら最初から自分で頼みやがれなのだ。
気ぃつかえよ? 笑わせるななのだ。まずは自分の美容に気をつかえと言ってやりたいのだ。
……はやく帰りたいのだ。
はやく帰ってお風呂入りたいのだ。
付き合い。付き合い。付き合い。
果たしてこの付き合いに意味はあるのか。否、皆無なのだ。モブ原がイキリ狂ってるだけで、楽しいのはモブ原だけなのだ。
くだらない時間ほど長く感じるのだ。
けれどやっと解放されたのだ。晴れて自由の身!
「おつかれっした〜」
社交辞令の挨拶だけ済ませて踵をかえした時、我を呼び止める声がした、のだ。
「カピバラさん、二次会行かないんですか……?」
この声は、金魚の糞子達とは雰囲気の違う最近入った新人ちゃんの声だ。我が立ち止まると、モブ原が「アイツは用事あるんだってさ⤴︎あ。あんなやつ、放っておい↑ぃて、行こうズ、新人ちゃぁ⤴︎↑⇄⤵︎⤴︎〜ん」とか言い出したのだ。
別に用事はないのだ。行きたいわけではないけれど。何だか、凄く心がザワザワする、のだ。
「我、わ、我は帰るのだ」
トコトコトコトコトコ!
足速に、四足歩行で夜の繁華街を走り抜け、駅に到着したのだ。マッコリが地味に効いているみたいで、少しフラフラするのだ。何で普段飲まないマッコリなんて飲んだのだ……
周りのヒト全てが、敵に見える、のだ。
カピバ=ランヴォルギーニャは、
ひとりぼっち、なのだ
「カピバラさんっ!」
……え? のだ。
「よ、よかった〜、追いついた! カ、カピバラさん、ほんとは用事なんてないですよね?」
「あ、そのっ、えっ、幼女好きなんて言ったことないのに!? のだ」
「幼女じゃないですよ、用事、です。それにしても、モブ原さんってヒドいですよね。何も飲み会であんな話しなくてもいいのに……」
「し、新人ちゃん……二次会は? のだ」
「つまんなそうだし、適当に抜け出しました。けど、まだ飲み足らないんですよね〜」
何この展開? のだ展開?
「良かったら、飲み直しませんか? カピバラさん」
「の、のだぁ〜」
「ど、どうしたんですか? 何も泣かなくても〜」
※朝まで呑み明かした、のだ
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