タイトルマッチ:チャンピオン・天道寺朱夏
ドガァッ!
『あーっと!挑戦者のフックがチャンピオンに炸裂!これは厳しい!』
言われなくてもそんなことはわたしが一番分かっている。リングの上で殴られているのはわたしなのだから。
ヨロヨロと後ずさり、相手を見やる。先のラウンドで打ちのめしてやったはずの挑戦者は不敵に笑っていた。この挑戦者、こちらの想定以上に強い……!……だけど、このまま負けてやるもんか。その顔を見て闘志が再び湧き出してくる。
ふらついているわたし目掛けて、挑戦者が突っ込んできた。ヤバい。避けるも防ぐも間に合わない。わたしは無我夢中で手を出す。
バッコォッ!
「……ぶはぁ……ッ!」
ドターン!
「……ダ、ダウン!……1!……2……!」
『こ、これは!チャンピオンのカウンターが決まったぁーっ!挑戦者、これは立てるかぁ!?』
やった!思わず笑みが浮かぶ。できたらこのまま立たないでくれと願いながら、わたしはダウンした挑戦者を見つめていた。
彼女は身を起こそうとするが、わたしのカウンターが効いたのか、上手く立ち上がれないでいる。
「……9!……10!ノックアウト!」
カンカンカンカーン!
わたしの勝利を告げるゴングが鳴り響き、喜びに顔がほころぶ。
……強かった。それが素直な感想だ。彼女に健闘をたたえる賛辞の言葉を贈りたいが、息が乱れ、言葉は出てこない。
彼女は未だに起き上がれていない。挑戦者側のセコンドとドクターがリングに上がってくる。……大丈夫だろうか。わたしはそれをじっと見つめていた。
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