第3話 婚活神が決めたお相手は? ―3
「お父様、お兄様を殺してください!」
屋敷に帰れば義妹のシルフィが、最低最低とあたり散らし、しまいには父殿に僕の殺害依頼を出すしまつだった。
「なぁ、シルフィ」
「何よ! クソデブお兄様ッ!」
「別に婚約は絶対ではないのだから破棄すればいいじゃないか」
「それが出来ていたら苦労しないわよッ!」
婚約破棄は本人の意思で簡単にご破算に出来る。それが出来ないって事は……。
「シルフィは何のギフトを貰ったんだ?」
「ふふ〜ん、聞いて驚きなさい。私が授かったギフトは、特級賢者よ!」
「「「おおおおおおッ!」」」
テーブルで晩酌を交わしていた兄殿達もシルフィの特級賢者と聞いて驚いている。
さもありなん、賢者とは三属性魔法を使える魔法使いで、特級賢者とは火、水、風、土の四属性が使える魔法使いの事だ。
「はあ、だから婚約破棄出来ないのよ!」
プンプンと怒りまくっているシルフィに助言をする人がいた。義母殿だ。
「シルフィ、あなたがリオンさんの事を嫌う気持ちがある事に、母はいつも悲しく思っていました。でもサセタ神様はそれを見ていたのですね。なぜサセタ神様があなたに破格のギフトを授けたのかゆっくりと考えてみなさい」
「…………はい、お母様」
少し溜飲を下げたシルフィだけど、僕は彼女に告げなければならない事があった。
「シルフィ、すみませんがゆっくりと――――」
「ふん! お兄様を許すとは言ってません! なによ、もうっ!」
プンスカとまたまた怒りだし、シルフィは二階への階段を上がっていってしまった。
「あ、あの、シルフィさん、ゆっくりとは……」
バン!!
勢いよく閉まった扉の音が、僕の言葉に耳を傾ける気がないことを告げていた。
◆
「ちょっと、クソデブバカお兄様! もう呪われた山に向かうって、どういう事よ!」
朝の街並みを横目に僕は御者台に座り馬車を走らせていた。
幌の中から御者台に身を乗り出し、僕の首を締める義妹のシルフィ。
ハハハ、僕の脂肪を舐めて貰っては困るのだよ。君の細い指では僕の首は締めきれまい。
街中を走り抜けて、城門の外へと出ると、僕は馬車を停車させた。
「フフフ、またしても、このわたくしを待たせましたわね、キモデブのリオン様」
「おっそいよぁです! あたし一人でルミアーナ様のお相手は出来ないっつうのぉです!」
城門の外で待っていたのは、アザトーイ王国第三王女のルミアーナ・アザトーイ様と、ムッソウ子爵のご令嬢クスノハ・ムッソウ様だった。
彼女たちの後ろには沢山の荷物が山となっている。
「お、お兄様? これはどういう事ですか?」
「ルミアーナ様とクスノハ様も僕の婚約者なんですよ」
「聞いて無いわよ……」
「昨夜に言おうとしたら、部屋に行ってしまったので話しそびれました」
「オッハー、シルフィっちぃ〜です!」
「おはようございます、シルフィさん」
「お、おはようございます、ルミアーナ様、クスノハ様」
頬を引き攣らせながら笑うシルフィがなんとも滑稽で面白かった。
「なにニヤついてんのですか、クソバカ変態キモデブお兄様」
「え、いえ、別に……」
「はぁ〜、なんでこんな兄に美少女が……」
「シルフィっち、それがあたしらの試練だよぉです。アハハハ」
「わたくし達の残念な、それはそれは残念な婚約者のお陰で、素晴らしいギフトを賜ったのですから、そこはもう諦めるとしましょうシルフィさん」
「……そうですね」
軽くディスられた僕は、山の荷物を馬車に積み込み、汗まみれになった服のまま御者台に乗り込み馬車を走らせた。
道すがら、なぜ早く出立したかの説明をルミアーナ様がシルフィにしてくれた。と言うのも、ルミアーナ様のご都合だったからだ。
ルミアーナ様のギフトは超破格の聖神のギフト。いま現在それを知っているのは、ルミアーナ様と僕だけだ。
この事が国王様やお城のご兄弟や重鎮達には知られたくないとルミアーナ様は仰っていた。「ホホホ、天の時にはまだほど遠いのですわ」とか仰りながら。
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6/24 お詫びと引っ越しのご連絡
新連載した【キモデブ】ですが、新規で【異世界】カテゴリーに引っ越しします。
改稿していたら【ラブコメ】のカテゴリーエラーになってしまいました。【ラブコメ】読者様で、【異世界】でもいいよ、と言う方は宜しくお願いします。
タイトルも以下に変わります。
【ヨシ、国を買おう! ―魂が異世界転移したらキモデブだった!?魔法の使い過ぎで激ヤセしたら三人の美少女婚約者が急に優しくなったよ!神様からのクエストで辺境の森に行ったので秘密国家を作ってみました。】
↓リンク 範囲指定 長押し 開く で飛びます
https://kakuyomu.jp/works/16817139555907663915
基本コンセプトは変わりませんが、異世界転移要素と、ザマァ要素が加わりました。
宜しくお願いします。
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