堕天使のノア
第一話 悪魔と名乗る天使と出会いました
声の方を見ると、そこにはかわいらしい女の子がいた。黒髪の美しい少女だ。目は口紅のように赤く、ルビーのように美しく輝いていた。
それよりも、何故かその少女はとても薄い肌着のようなものしか身に着けていない。
「あら、貴方どうしたの、こんなところで……」
「えっと、私は……」
「そんな服じゃ寒いでしょう。私の城で着替えましょう」
「あ、でも……」
「もしかしてお母様がいらっしゃった?」
「い、いないです……」
孤児。この世界では珍しくはない。しかし、一つ不可解なことがあった。それは、あまりにも綺麗すぎるということだ。顔立ちが美しいという話ではなく、物理的に綺麗すぎる。汚れが一つもない。貴族の令嬢のように小綺麗なのだ。もしかしたら貴族の娘? しかし、お母様はいないとおっしゃっていたし……。
「貴方はどこから来たのかしら……?」
「えっと……」
もごもごとしながら目を泳がせる少女。言いたくないこともあるのだろう。
「言いたくなければ言わなくても大丈夫よ。もし帰らなければいけない場所があるのなら、知っておかなければと思っただけなの」
「そう、ですか……」
彼女は返事をしながら、少し長い前髪で目を隠す。
「私の城はすぐそこよ。まだ使用人がいないから、散歩がてらここに寄ったの。馬車がなくて申し訳ないけど、行きましょうか」
「はい……」
「よかったらこれを使ってちょうだい」
自分が羽織っていたカーディガンを彼女の肩にかける。少し驚いたように、彼女はこちらに顔を向ける。ふわっと浮いた前髪から除くのは、ルビーのような美しい目。
「え、でも……。それだと、えっと」
「ふふ、私の名前はソフィア・フィレイン・フローレスよ。ソフィアとでも呼んで」
「えっと、ソフィア、さま……」
もじもじとしながら彼女はそう呼んだ。
「そ、ソフィア様が寒くなります……」
「大丈夫よ。今日はお天気がとてもいいもの」
そうにっこりとほほ笑みかけると、彼女は安心したようにカーディガンに袖を通した。横目で彼女を見ると、ふふっと目じりが緩んでいた。
「白の門が見えてきたでしょ。あれが私のお城よ」
「そうなんですね……」
「立派でしょ? 私ひとりじゃもったいないから、よかったら帰りたくなるまでいてもいいからね」
「え、そんな、悪いです……」
「でもこんな可愛くて薄着の女の子をそのままにはしていられないわ……。とりあえず服だけでも着替えないと」
そんな会話をしながら、白い門にたどり着いた。我ながらいつ見ても立派だと思う。この門の周りにも植物をいくつか生やさないとね。少し殺風景だわ。
「あの……、えっと」
「どうかしたの?」
門の前で立ち止まってしまった少女。何か言いたげに前髪の奥からこちらを見ている。
「あの、私、悪魔なんです!」
「え? 悪魔?」
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