第8話勘違いを正せた

午後の授業が終わり、SHRも終えた教室は賑わいが戻っていた。

教室に居残る理由もなく、通学鞄を肩に提げ教室を出て廊下を歩みだす。

廊下の壁に身体を預け、友人らと談笑を交わし合う生徒らを横目に足を止めずに下駄箱へと向かう。

下駄箱で履いていたスリッパを脱いでいると横から名前を呼ばれ、声が聞こえた方に顔を向けると来栖が息を乱しながら笑顔を浮かべていた。

「……るす、さん。どうしたの?」

口内が渇いていて、思っていた以上に掠れた声だった。

「あっえぇ〜とぉ……恵南先輩を怒らせるようなこと、しましたか?」

「え、ううん……怒って、ないよ。怒るような……」

「今朝からずっと冷たいっていうか、その素っ気ないっていうか……避けられてるなぁって。昼食に誘ったときもご機嫌斜めみたいな……不貞腐れたように見えて。今も……その変わってないように見えて」

「……めん。来栖さん、ごめんな、さい……酷い態度をとって。その……今朝、っていうか昨夜なのかな?寝てるときに、そのえっと、来栖さんが出てきた夢を……みて、それが……来栖さんがは、はだっ、裸で出てきて……」

後半につれ、たどたどしくなる言葉に耳を傾けていた彼女が裸という単語に可愛い悲鳴をあげ、反応した。

「ふぇっ!?は、ははっはははだっ、ハダカ!?わ、私の裸!?そそっぅ……そ、そうなんだ。そ、それで……私の顔を、みてくれなかったんだ」

女子が下駄箱で裸という単語を叫んでしまい、周囲にいた生徒らが私と来栖の見える位置まで確認しにきた。

言うまでもなく、来たのは男子が多かった。


恥ずかしさのあまり、二人して下駄箱を離れ昇降口を抜けた。

来栖が差し出してくれた右手を手に取り、彼女が駆けだす勢いに振り落とされないように握られた手にギュッと力を入れた。


彼女の誤解が解けてなによりだ。

すれ違いは、溶けていた。

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