第6話まともに、見れないよ…
「——んぱ〜いっ!はぁ……恵南っはぁはぁ……っ先輩ぃ。はぁはぁ……」
息を切らし呼ばれ続ける声が背後から近付いてくる。
「あぁ、来栖さん……」
「はぁはぁっ……どうっ、どうしてぇっ、無視するん、はぁはぁ、ですかぁっ……先輩ぃ」
椅子から僅かに腰を浮かしたような体勢で膝に手をつき、訊く来栖。
「無視したわけじゃ……ご、ごめんなさい、来栖さん」
「そ、そうなら、良かったです……あ、あのぅせ、先輩……?どうして目を逸らしてるんですか、私から?」
顔を上げ、視線を外す私に躊躇しながら訊いてきた彼女。
「ああぁ、えぇっと……それは、その……」
「私……先輩に、気に障るようなこと、しましたか?」
「そ、そそっそういうんじゃ……なくて、その……」
視線を逸らす度に視線を合わせようと顔を向けてくる彼女をふり払おうと視線を逸らすがめげない彼女に根負けしてしまう私だった。
夢に出てきた彼女の……裸体が、想起させられそうで、まともに彼女の顔を見られないのだ。
ああぁーーーーッッ!
通り過ぎる通行人の迷惑がる視線に晒され、気まずい状況下に思考がまともに纏まらず、口を閉ざしてしまう。
「ごめんなさいっ先輩っ!でっではっ先に行きますね」
そう言って、彼女が駆け出し、遠のいていく。
手を伸ばしたが、既に彼女の姿は見えず、傷付けてしまったという後悔が私を襲った。
い、言えないよ……彼女に、あんなこと……言えるわけ、ないじゃん……
足を踏み出そうにも、上手く力が入らず思うように歩けなくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます