第4話価値観は人それぞれで良い

中庭のベンチに腰掛け、昼食を摂り始める私たち。

「お名前、伺っても良いかな?知らないと不便だから……」

「あっ……すみませんっ。くっ……来栖、三奈です。よ、よろしく、お願いします……今後とも」

「あぁ、うん。来栖さんね、覚えた。私は、恵南茜。よろしくね」

「は、はいっ……」

緊張が続いてうわずった返事をした来栖。

「来栖さん……私って怖い?」

「え、いや怖くはな……いです。はい……」

「そう。体育祭のとき……驚いた。後輩から……可愛い来栖さんに手を引かれ、連れてかれるなんて」

「その節はすみません、先輩。先輩なら……って思って」

「……もう良いよ。可愛い後輩にああされたら、悪い気はしないよ」

「えっとぅー……確か、嫌がってませんでしたか?」

私の表情を窺いながら、確認する彼女。

「あのときは……そうだったかも。お題を知らずに連れてかれたし、それに……来栖さんとはあのときが……」

「そ、そそっうですよねー。関わりのない後輩から……ですもんね」


喉の渇きを感じ、緑茶を口に含み、喉を潤して、口を開く。


「来栖さんはさ……私のこと、に見てる、ってことで、合ってる?」

「……はい。やっぱり、キモいですよね……こういうの」

「きもい、だなんて……ただ、分からないだけで」

女子を、同性を、恋愛対象としてみてこれなかった人生を歩んできた私には、ただ困惑しかない。

きもい、とは思わない。

恋に落ちて、誰を好きになり、結ばれたいと思うかは、その人の自由で第三者ガイヤが口を挟むことではない。

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