本編

第3話ぎこちないフタリ

「あのぅー先輩……」

「えっ……?」

背後から控えめな声がかけられ、足を止め振り返ると、息を切らした後輩の女子が緊張した面持ちで立っていた。

「良かったら、私と昼食を一緒に……とぉ思いま——」

彼女の声は、緊張のあまりにうわずっていた。

「私なんかで良いって言うなら、別に構わないけど……」

「あぁありっがとうございますぅ……えっとえっとぅ——」

「あーっとぉ、どこで食べたい?中庭のベンチ、はどう?」

慌てふためく彼女に、声音を柔らげながら尋ねる私。

「ああはいっ……すすっ、すみません。先輩とでし、たら……どこでも……」

「そう……謝らなくていいから」

「は、はい……」

「じゃあ、行こうか……」

俯いた彼女との会話が続かず気まずくなり、右手で頸あたりを摩りながら促した私。

「はい……」


彼女と並び歩く廊下が、何故だか途方もなく長く感じた。

いつぶりだろう、誰かが私の隣を歩いてくれるのは……

蒸し返したくない、思い出したくない……何かに、誰かに、縋っていた……期待していた哀れで、憐れな自身ヤツにはもう——


「先輩……?」

彼女の声で我に返り、校舎を抜けて中庭に出たことに気がついた。

「……ううん、何でもないよ」

風が頬を撫でて、瞳に彼女のウルフカットの髪が靡くのを捉えたのと同時に記憶が蘇る。

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