第2話浸らずにはいられない想い出
「あのぅー、一緒に来てくださいっ!」
そんな控えめに声を掛け、意を決したように大声で誘うと同時に私の手首を掴んだ来栖が有無も言わせずにグラウンドへと駆け出した。
「ちょっ——」
来栖は、二年二組の応援席のパイプ椅子が密集したテントをかきわけ、ゴールテープが張ったゴール地点へと私を連れて一位を掻っ攫った。
ゴールテープをきり、拍手喝采を浴びる彼女は、クラスメイトに片手を盛大に振っていた。
競技の借り物競走を終え、手首を掴まれ続ける私は彼女が一向に離さないでいたので、痺れを切らして「そろそろ離してくれません、手を」と発した。
我に返ったように彼女が、掴んでいた私の手首を離して、申し訳なさそうな表情を浮かべ謝罪した。
「先輩、すみませんでした。引いたお題がこういうので……」
体操服の半ズボンのポケットに手を突っ込み、借り物競走のボックスから引いた紙切れを取り出し見せた彼女。
紙切れに書かれた言葉を瞳が捉え、堪えられない羞恥心に紅くあからみ出した頬を両手で覆いながら膝から崩れた私だった。
紙切れに書かれていたのは——。
***
「——ってぇ、聞いてます?ねぇー茜先輩ってばぁ〜っ!」
「あぁーうぅんっ。聞いてたよ、アレでしょアレ」
去年の体育祭でのあの感覚が脳裏にふと過っており、浸っていた私で咄嗟に聞いていたように返答した。
「やっぱり聞いてなぁ〜いぃよぅー、この
「ごめんって……」
私は、
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