第3話 俺のこと

 そう、ダメだった。俺がどんなに頑張っても。


 さっきもいったが、俺は勉強ができた。本を読むのも好きで、ほかの子より沢山の言葉を知っていたし、読解力もそれなりにあった。だから、教科書を読めばたいていのことは理解できたし、テストも解くのが速い上凡ミスが少なかった。


 すなわち、「頭が良」かった。


 それが理由かはわからないが、その担任からは、「できる人」というように認識されていた。


 そこまではよかった。今までの担任のように、面倒見がいいからと友達の勉強を見てあげて、とか、やることがほかのみんなより早く終わるからそこの算数ノート配っておいて、とか言われるのかなーと思っていたし、別に嫌でもなかった。他人ひとに教えることは自分の勉強にもなるから。


 でも、違った。その担任は、俺が「使える」人間だと分かった瞬間、周りのクラスメイト達と俺とで接し方を変えた。


 まず、極端に俺のことを遠ざけた。授業のことで聞きたいことがあって話しかけても「忙しいから」と聞いてもらえなかった。挨拶は…まあ、察してほしい。


 次に、気持ち悪いくらいの理不尽さを目の当たりにした。(ちなみに、「理不尽」という言葉はこのぐらいのときに覚えた。意味を知ったときは、このもやもやの正体が分かったぞと舞い上がった。)


 学活の授業中にやることが終わったので担任に何をすればいいか聞きに行ったら、

「自分で考えて」と言われ、じゃあ本でも読むかとおとなしく読書をしていたら

「何をしているんですか」と怒られた。


…本を読んでいます。

…そういうことじゃないです。なんで本を読んでいるんですか。

…だめですか?

…ダメに決まってます。だって授業中だよ?だれがそんなことしていいって

 言ったの?

…じゃあ何をすればいいですか?

…だからそれを自分で考えなさいと言ってるんだよ。

 緋羽さんは頭良いんだからわかるでしょ。


 2個隣の席を見ると、その子は「か〇けつゾ〇リ」を読んでいた。


 ちなみに俺が読んでいたのは、「ミミズの生態と自然環境について、また私たちとの関係」という本だった。…めちゃめちゃ面白かった。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る