3日目と998日目
3日目
三橋さんが、私の家に来る。らしい。
何でだ? どうしてこうなった?
部屋を入念に掃除しながら、放課後の一幕を思い返す。
――――――――――――――――――
「今日、加奈ちゃんの家、行っても良い?」
「……え?」
見やれば、三橋さんは小首を傾げている。自分が妙なことを口走ったとは、微塵も思っていない様子。
彼女は続ける。
「何か用事ある感じ?」
「い、いえ、別に、そういう訳では」
「じゃあ、行っても良い?」
「……そういうことに、なりますかね」
「加奈ちゃんの話だよ? 分かってる?」
――――――――――――――――――
断らなかったのは、断る理由がなかったから。
それだけだ。本当に、他意はない。
私の部屋に入るやいなや、三橋さんは声を上げた。
「ヤバ! めっちゃ綺麗!」
「そ、そうですか? 普通だと思いますけれど」
「これが普通だったら、あたしの部屋は地獄だよ……」
「掃除してください」
ちなみに、現状を普通だとすると、いつもはちょい地獄くらいだ。
「これ、お茶です。どうぞ」
「わー! ありがとー! あたしお菓子持ってきたから、一緒に食べよ!」
その日は、お菓子を食べながら、彼女の話を聞き、時おりボードゲームに興じただけだった。
なのに、彼女は最初から最後まで、やたらと上機嫌だった。やっぱり、変な人だ。
……悪い気はしないけど。
998日目
「ちょっと友達と出かけてくるね」
いきなり言われて面食らってしまった。
「……ふぅん」
淡々と返した。つもりだったのだが、由香は微笑で言う。
「だいじょーぶだよ。夕飯までには帰るから」
「……何も言ってないけど」
「顔に出てるよ~」
彼女は、ソファで丸まった私に歩み寄り、少し強めにハグしてくれた。
私、面倒くさい女になっちゃったなぁ……。
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