蛇視眈々

@pnpkn

第1話 現から夢から現

息を切らしながら走り、閉じるエレベーターのドアに体を擦りながら入り込む。

ギリギリ乗り込めたことに安堵しながら息を整え、自分の家がある階へのボタンを押そうとしてふと気がつく。


(ああ、これは夢だな)


それもそのはず、自分は高層マンションやエレベーターを使う所には住んでおらず一軒家の庭付き4人家族で暮らしているからだ。


せっかくだし一番高い階に行ってみるかと70のボタンを押す。

いつ目覚めるか分からないが[夢の中で自由に動ける]、というのは心が踊る。

どんどん数字が大きくなる電子表示板を眺めながらこの先にあるものを期待する。

漸く、目的の70階に着きドアが空くのを待っているが一向に動く気配がない。それどころか電子表示板の数字が80を超え、まだ上がり続けている


なにかがおかしい


そう感じたがここは夢だ。こんなものかと思いながら目が覚めるのを待つか場面が変わるのを待つか。どちらにせよ自分は何もできないのは確かだ。


狭い空間の隅で座り込み背を壁に預け、目をつむる。(夢の中で寝るのも不思議なものだなあ)と思いながら暫くすると


[チーン]


遂に変化が起きる。


ドアが開いた。


このまま目が覚めるのかと思っていた自分は予想外の展開に驚く。

すっと立ち上がりエレベーターから降りる。

目の前に広がるのは抜けるような青と足元にある濃い白。

まるで雲の上に立っている様な風景

あまりにも様変わりした状況も[夢だから]の一言で片付ける。




雲の上をゆったりとした歩調で進む。


不思議な景色を味わうようにじっくり進む。


雲の感触が分かるように探りながら進む。


そろそろ終わりが近いと感じ起きた時に話のネタにしようと焼き付けながら進む。


体が青と白に沈み視界も意識も黒に沈む。



[さあ、目覚める時だ。]

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