閑話 2030年度記録140 難易度3-3クエスト その4
『これより2030年度記録140、難易度3-3クエスト、2日目の記録を開始する。録画チェック』
『『録画よし』』
録画が開始されて映し出されたのは、木張りで作られた内装にガラスのはめられた窓、木製のシーツもないベットと机が置かれた簡素な部屋が映し出される。
『今日は、地下水道にて大ねずみの掃討を行う。他の討伐者も居るため気を付けるように』
Aが手に持っていた羊皮紙を机の上に広げる。
『今回の情報収集の途中で手に入れた地下水道の図面です。地下水脈にダムを建設し、その水を地下水道に流し込み、井戸から水をくみ上げ、最終的には下水道に流れ込む作りです。分岐は多岐にわたりますが私たちが通れないほどの広さの通路はすべて水で満たされているため殲滅は難しくないかと思われます』
『壁の材質は?』
『レンガでした』
『壁を破壊して巣を作っている可能性も考慮しないといけないのか』
『この区間を私が、この区間をAが、残りをBが担当する』
羊皮紙に跡が残らないように指で指し示して担当を振り分ける。
『他の討伐者の横取りは避け、今日だけで殲滅する。今日中に終わらないもしくは、妨害や不祥事の際は、遠慮なくリタイヤすること。記憶はなくなるが、今回の情報を持って帰れば次回が楽になるのだから無理はしないように』
『『はい』』
『それでは、出発する』
羊皮紙を片付け、宿から出ると、木造の建物が所狭しと並ぶ通りに出た。
無作為に建物が建てられているため、遠くまで見通すことができないが、建物全体が低いため少し上を見れば遠くに庁舎が見える。
庁舎前の広場に出ると、兵士が詰所としている日よけ程度の簡素な建物へと足を進めた。
『大ねずみの討伐を請け負ったものです。確認をお願いします。』
庁舎で手渡された札を兵士に渡すと、ポケットから針を取り出し、側面の小さな穴に差し込んだ。
すると、札からブービー音が鳴りだした。2秒ほどで鳴り終わると、無言で足元の石畳を持ち上げ地下に続く階段を出現させて札を返してくる。
『どうも』
兵士の対応に関心を示さず軽く声をかけて、地下へと降りていく。
地下水道は3名が横並びでも十分に通れる広さはあるが、点検用なのか人がひとり通れる広さの通路が作られている。
『カメラを暗視モードへ』
真っ暗だった画面が緑がかった映像へと変化する。
『暗視スキルはきちんと作動させているな』
『『はい』』
『それでは各自持ち場で殲滅開始』
その合図とともに、音も無く駆けていく。
時々止まったかと思うと、大ねずみと思われる死体を袋に詰める光景が映るが、戦闘を行ったとわかる映像が一切、映ることはなかった。
そのような映像が少しの間続くと、前方が白く塗りつぶされた。
『おおと、同業者ですか。松明も持たずにこんなとこに居ると大ねずみと間違えられて襲われますぜ』
そう声をかけてきたのは、3人パーティーの大柄な男性である。
『それは申し訳ない。私は急いでいるので』
カメラの設定を一時的に元に戻すと、大柄の男性のほかに、小柄な男性と身丈ほどのあるバックを背負った少年と思わしき子供が映し出された。
『まてまて、こんなところであったんだから情報交換しましょうぜ』
小柄な男性が作り笑いを浮かべながら近寄ってきた。
『そんな暇はないので、』
リーダーが断ると同時に、3人組から距離を取る。すると、小柄な男性の手にはどこから取り出したのかレイピアのように細い剣を突き出していた。
『っち、ミスしてんじゃねぇよ』
大柄な男が舌打ちしたあと、ナイフを取り出し、石を投げながら襲い掛かってきた。
リーダーはナイフを取り出し、石をよけながら少年に向かって投げる。大柄の男が突き出したナイフを持つ手を右手でつかみ足を掛け、水の中に落とした。その後深く踏み込む形でレイピアを避けたのか地面が映り、全体が映ると、のどが切り裂かれた小柄な男が、残った左手でのどから出る血を抑えようとしている。その後ろではへたり込んだようにバックにもたれかかる少年の額から、ナイフが生えていた。
大柄な男性が這い上がってくると声もかけずに首をはねた。
その後、仏をきれいに並べ手を合わせカメラを暗視モードに戻し大ねずみの討伐に戻った。
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