第22話 薬と病気と妊活
私がぶち当たった重大な問題。
それは、「妊娠」だった。
炭酸リチウムは、妊娠を希望する女性には禁忌の薬になっている。
そのため、妊活を始めるとなれば薬をどうにかしなければならない。
正直なところ、薬の服用をやめてしまえば話は早いのだが、薬の服用をやめてしまえば、また怒涛の嵐のような結婚生活に戻ってしまうだろう。
だから、薬を休薬するという選択肢は、私の中にはなかった。
そして、主治医も同じ意見で、休薬ではなく、薬を切り替えましょう、ということになった。
しかし、薬を切り替えるにも、えらく時間がかかる。
炭酸リチウムを少し減らして、代替薬を追加して。安定するか様子を見て。
通院頻度は2週間に1度。
診察の度に気になったことや症状について報告、また薬の変更を進めていく。
そして、薬の切り替えが完了した後も、3ヶ月〜半年は様子を見て、特に問題なく過ごせることを確認してから、ようやっと妊活が始められる。
薬の切り替えをしている間、周りの妊婦や妊活している知り合いを見ては、「自分は(妊活の)スタートラインにすら立てていないんだ」と現状をよく嘆いていた。
それが病状にも影響してしまったこともあった。
そんな私を、旦那はよく支えてくれたと思う。
「妊活のスタートラインにすら立てていない」自分は、「もう時間がない」と謎の焦燥感に襲われていたのだと思う。
焦りが一番禁物。
本当はわかっていたのに。
でも、どうしたって周りと自分を比べてしまう。
その焦燥感から自分を解放することが、実は薬の切り替えの進捗と病状の安定に一番重要なことだったりする。
焦るな、焦るなと自身をなだめる自分、旦那に何とか支えられつつ、約1年。ようやく薬の切り替えが終了した。
妊活のスタートラインに、1年かけてやっと立つことができた。
薬の切り替えが完了して、妊活のGOサインが主治医から出たときには、何故か涙、涙、だった。
薬の切り替え中、病気を抱えていることや妊活ができないといった「普通の人と違うこと」に対して、どこか後ろめたく、焦り、悲しさ、悔しさ、いろんな負の感情を抱えていたように思う。
病気を抱えながら、薬を服用しながら、妊活を希望するということはとても大変なことなのだと実感した。
もちろん、妊娠を諦めて病状の安定を図るということも選択肢の1つではあった。
しかしながら、私は病気を抱えながら妊活をするという選択肢を選んだ。
大変な遠回りの道のりではあったが、とりあえず妊活のスタートラインに立つまでのお話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます