第8話 1度目の自殺未遂〜精神科初診

進級するにあたり、何冊か教科書を買わなければいけなくなった。

医療系の教科書は、とにもかくにも高額だ。

先輩に譲ってもらうという裏ワザもあるが、多くはそうはいかない。


全部合わせて、ざっと数万円。

バイトで生活費を賄う私にとっては、なかなか難しい出費だ。

仕方なく、母に電話した。

事情を説明した。


「そんなもの聞いてない、最初に払った学費に入ってるだろ、嘘付くな、金目的か、この守銭奴!」と罵られた。


それ以外にもいろいろと怒鳴られた気がするが、その先の記憶がない。

なぜなら、私は怒鳴られながら昔のことがフラッシュバックしてしまい、パニックに陥ってしまったからだ。


母のカミソリで自分を傷付けた日の記憶が蘇る。


そして、あの時と同じように、私は自分を傷付けた。

カミソリで自分の手首を思いきり切っていた。

何もかも、どうでもいいというか、考えられなかった。死んでもいいと思った。

もはや、あの時の私は、「私」ではなかったのかもしれない。


噴き出る血。

血溜まりができる。

過呼吸になり、倒れる。

血は止まらない。

ドクドクと溢れる血を見ながら、意識が遠のいていく。


私は、当時付き合っていた彼氏が呼んだ救急車で、救急救命センターに搬送された。

何とも悔しいことに、自分の大学の実習先だった。

救急隊から母に連絡が行き、しかも大学にも知られることとなってしまった。

なんてこった。


ちなみに、母には「自費で3万もかかった!自分で払え!キチガイ!」と罵られた。


教科書代と同じくらいの出費と、消えない傷がまた増えてしまった。

これが1度目の、私の自殺未遂だ。


それが私の「双極性障害」の発症だったかどうかは今となってはわからない。

だけど、何かしらの「精神疾患の材料」が、その時に揃ってしまったのだろうと思う。


その後、大学で紹介された精神科を受診することになった。

精神科を受診すると、生い立ちや家族構成等々、いろいろと詳しく聞かれる。


もちろん、自殺未遂に至った経緯も聞かれる。

私は、正直にいきさつを話した。


フラッシュバックのこと。

母のこと。

記憶が曖昧だったけど。


そこで、私は医師から衝撃的なことを言われる。

それは、頭をハンマーでカッチーンと殴られたような衝撃だった。

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