第5話 『人とのコミニュケーション』

門の前での検問を終えて、無事タナンヤの街に入れたゆりとルザス。目の前には、建ち並ぶ商店や住宅とその道を歩く住人の姿が見えていた。


『いや〜、相変わらずタナンヤは賑やかですね〜。』


ニッコリと微笑んで言うルザス。ゆりはと言うと.....。


『(ひ、ひ、人が....いっぱいいる...。)。』


めちゃくちゃ、体を細かく震えさせながら無表情で青ざめていた。その時姿勢は、背筋が異常にピン!としていた。


『僕はよく、ここに食材や着物系などの商品をこうして馬車に乗って届けに来ているんですよ。優しい方もいるので助かっています。』


馬車をゆっくり走らせながら言うルザス。すると横から、商店をやってる女性が声を掛ける。


『あらルザスじゃないか!今日もいい食材持って来たんだろ?楽しみにしてるよ!』


『ヤミルさん!ありがとうございます!他の方の商品を届けましたら向いますので!よろしくお願いします!』


『あいよ〜!頑張りな〜!気抜くんじゃないよ〜?』


軽く手を振って、応援するヤミルと言う女性。ルザスは、元気な声で返事をした。


『さっきの方はヤミルさんと言って、私が幼い時からお世話になっている方なんですよ。ヤミルさんは、この商店街で知らない人はいない程人気のある方で、気軽に話してくれるんです。それに宿もやっていて、宿泊料を偶に安くしてくれるんですよ!もし、泊まる宛が無ければ泊まってみて下さいね。とても落ち着きますよ。』


少し上の青空を見上げながら、明るく元気な声で教えるルザス。


『.....うん。...その時に。』


少しだけ、ニコッと微笑んで言うゆり。ルザスは、元気な声で言う。


『さて、この商品をヤミルさん含めて10人の方に届けにいきますよ〜!』


偶に子供の様なテンションで言うルザス。この後は、一人一人の場所へ行き食材や着物系などの商品をルザスと一緒に届けに行くゆり。届けた時に、子供の頃の話をする時や、最近の街のニュース、朝御飯や昼御飯に何を食べてるか...健康かどうかなど。色んな人に会う度に意気揚々と楽しそうに話しているルザス。そうしている時間もあっという間に過ぎていき、とうとう商品を届ける人は最後の一人となった。


『いやぁ、すいません。話に夢中になってしまいました。おかげで夕方になってしまいましたね。あと一人なので、届け終わりましたら宿に向かいますね。勿論、ゆり様も泊まって貰いますよ。』


苦笑いして謝罪するルザス。片手で頭を擦りながら伝える。


『...何で、.....そこまで...してくれるの?。』


夕日の空を見ながら、ルザスに聞くゆり。


『.....何ででしょうね...。ゆり様には確かに恐ろしい力がある、最初、あそこで出会った時は怖かったですね。ですが、手を差し伸べる姿はとても美しかったんですよ。それに、貴方からは敵意は無いと...直感でしたが僕はそう思ったんです。衣服や、泊まるところを探すのは多分僕が過保護なんだと思います。ゆり様はピンチの僕を助けてくれました...。改めてありがとうございます。』


少し半目になって、軽く下を見ながら言うルザス。最後はゆりの方へ体を向けて、感謝を伝える。その時の姿は、夕日に照らされて美しく見えた。


『私も....ルザスさんに、会えて...良かった。』


ゆりも、ルザスに会えたこと、衣服や泊まる場所を探してくれた事に感謝する。こうして二人に、年の差はあれど友情が生まれた。

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