第4話 『繁栄の街『タナンヤ』。』

ルザスが自分の話をしたあと、目と鼻の先に

ルザスの育った街『タナンヤ』が見えた。


『...!綺麗....。』


そこには、沢山の住宅街と商店街が並ぶタナンヤの景色が見えた。大勢の人々がそこで暮らしている。タナンヤの街から1000キロ離れた場所に、国の中心部がある。そこには騎士団があり、民からの信頼が厚い。


『ここから、街に入りますが門番に検問をされると思いますので、気を付けてくださいね。

最近は人身売買する賊が1つの村を襲ったというニュースがありましたので。』


少し険しい顔で言うルザス。ゆりはその時、

微妙な表情を浮かべる。


『........(あれ、それもしかして私が暮らしてた村じゃ?いやいや、そんな偶然.....。』


両手で口を抑えながら青ざめてるゆり。


『しかもその賊の頭が懸賞金が掛かっていて

名前は『ソルド』って言うらしいですよ。』


『?!...。』


それを聞いたゆりの顔はさらに青ざめていた。

とても動揺していて、落ち着きがなかった。その証拠に、ゆりの目が泳いでいた。


『?どうかしましたか?具合でも悪いですか?』


こちらを向いて聞くルザス。ゆりは慌てながら勢いよく首を横に振る。


『なら良かったです。あ、そろそろ街の門に

着きますよ。』


前を見ると、タナンヤに入れる門に兵が2人いた。1人は紙とペン、もう1人は槍を持っていた。1人の兵がこちらに向かって指示をする。


『おい、そこの馬車止まれ、今から荷台の確認をする。』


『分かりました。お願いします。』


ルザスはそう言うと馬車を止めた。兵はこちらへ歩いてきて、荷台の検査を始める。その時、荷台に乗っていたゆりを兵は見つけた。

しかし、ゆりの漏れ出ている禍々しい魔力を見て兵は手に持っていた槍を向けて言う。


『お、お前!一体何者だ!ここに何の様だ!』


自信が持ってる槍をゆりに向けて言う兵。しかし、恐怖のあまり手が震えていた。ゆりはそっと両手を上げて説明する。


『私の村...襲われた。....一人でずっといた。

ずっと...森を彷徨った、けど...森を抜けて...

ルザスさんと...出会った。』


槍を向けている兵に、自身の事を簡潔に伝えるゆり。


『僕が、ゆり様に初めてお会いした時に衣服は非常にボロボロになっていました。本当の事ではないでしょうか。この禍々しい魔力は、恐らくアビリティの影響ではないかと思います。私がベルグォールから逃げている時に助けて下さいました。』


ゆりとの出会った経緯を説明するルザス。

ゆりの誤解を解こうと必死に説明する。


『そ、そうなのか?しかし、お前さん達の村を襲った賊はどうしたんだ?捕まれば、売られるか殺される筈だ。そんな奴等からどうやって...。』


ゆりに向けて槍を持った兵はルザスの説明を

聞くと、一旦落ち着いて槍を降ろした。その後、ゆりに賊はどうしたのかを聞く。ゆりは、二人から少し離れてアビリティを発動させる。


『アビリティ.....『魔血』。』


ゆりがそう言うと、右の掌から漆黒の血液が出て来て、ゆりの周りを旋回しながら浮かんでいた。まるで意思を持つかのように。


『私....奇跡的に生きてた。けど....他の子は死んだ...。けど、ソルド.....名乗った人生きてた。連れ去られそうになった....けど、頭から垂れた血を舐めた....魔血、アビリティに...目覚めた...。そして、...この力で殺した。』


ゆりが言い終わると、魔血はゆりの掌の中へと戻っていった。


『そうだったのか...まさか例のニュースの攫われた子だとは。ん?ちょっと待て!?今、話の中に『ソルド』の名が無かったか?!。』 


話を聞いて納得した兵。すると、次にソルドの事でゆりに聞く。


『た、確かに話の中にソルドの名がありましたね...。しかし、ソルドの力はそこらの魔物狩りよりやや下辺り...。ですがそう簡単に勝てる訳ではないです。』


ルザスも、その話を聞いて納得している。しかし思うことはある様子。


『私の...魔血は、猛毒だから.....それに、ま、真っ二つに...したから。』


『な、なんだと?!ま、真っ二つに!?』


ゆりの発言に、凄く驚く兵。ルザスはコクコクと、顔を頷く。


『なるほど...、ゆり様自身のアビリティに猛毒の効果がある様ですね。しかも、ゆり様が想像した形、つまり武器や防具...そういう物を自由自在に形作って使えるのではないでしょうか。』


魔血の性能の一部分を予想して言ったルザス。

ゆりは、そっと頷く。


『.....そうなのか。.........少し、考える時間をくれ。仲間とちょっと話してくる。』


『分かりました。』


そう言うと、兵は馬車を離れ、仲間の元へ戻っていった。その後は、約一・二十分ほど話をしていたが、槍を持った兵が二人の元へ向かって来る。


『悪いね、長く話をしちまった。ちょっと嬢ちゃんのことで話が揉めてたんだよ。』


少し、人差し指で頭をかきながら説明をする兵。はぁっ、とため息をしていた。


『何故です?ゆり様に何か問題が?』


頭を傾げて言うルザス。兵はその理由を少し落ち込んだ顔で話した。


『....この街は、栄えてはいるが治安は悪くてな?金を盗む輩や、殴る蹴るの暴行をして怪我人や死人を出してる奴もいる...。しかも、この街に初めて訪れた奴を襲って裏で売り払ってる奴もいやがる!俺はそれが心配なのさ。それにさっき、嬢ちゃんはソルドを殺したって言っただろ?殺したのは悪くない!とは言えないが、そいつは賞金一千セルコの賊だ。捕まえるか、殺した奴にはそれが支払われる。だから、それを狙って嬢ちゃんを襲ってくる奴がいるってことなんだよ。それに、嬢ちゃんのその髪色や瞳の色は希少で裏では価値がある代物とも言われている....。』


落ち込みながら、暗い顔で下を向く兵。ゆりは、そんな兵に言葉をかける。


『私は.....大丈夫です。それに、.....私は一人でも...生きていけるから。自分を守る.....力もある...。』


静かな瞳で下を向く兵を見るゆり。少し切ない表情をしていた。


『本当に...いいんだな?だが、これだけは誓ってくれ....さっき見せたそのアビリティ、絶対に!ピンチの状況になった時以外は使わないでくれ。嬢ちゃんの力は恐ろしいものだ。街のものがそれを見たらお前さんを気味がる人が大勢出ちまう。頼む。』


一人の少女に、一人の兵が頭を下げていた。

ゆりとルザスは少し驚く。けどゆりは、答える。


『.....分かりました。...その誓いを...守ります。おじさん....ありがとう。』


兵に礼をして言うゆり。兵は顔を上げる。


『俺の名前は、『ジゾ』って言う。よろしくな、『ゆり』。』


ジゾは、ゆりの頭を撫でながら笑顔でそう言うと門にいる兵の所へ戻っていった。すると、

門の扉が開かれた。


『検問終了!異常なし!入街を許可する!通っていいぞ!。』


ジゾが大声でそう叫ぶと、ルザスは馬車を動かす。


『さ、いきましょう。』


『(ドキドキするなぁ)....。』


心の中でドキドキするゆり。そんな気持ちでいる瞬間で、生暖かい風が軽く吹く。

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