第2話 『迷いの森』

ソルドとの一件の後、ゆりは迷いの森で彷徨っていた。


『うぅ...森から出られないよう。』


そう言うと、また歩き始めたゆり。その時、

魔物がゆりの前に現れた。


『グォー!!!』


『鳥の次は熊が出てきた...しつこいなぁ。』


ゆりの前に現れた熊は、『ベルグォール』。

全長約七メートルあり、長く鋭い爪は鉄を切り裂く程。幾多の冒険者や住人が殺された。

ベルグォールは魔力探知が鋭く、微弱な魔力量も逃さない為、見つかったら最後、戦うか

魔力を完全に消して逃げる事しか出来ない。


『グルルルル......ッッッッガアアアア!!!』


ベルグォールは、ゆりに向かって真っ直ぐ走ってきた。高く跳び、巨大な鋭い爪で切り裂こうとする。


『...アビリティ『魔血』私を守って。』


ゆりがそう言うと、右の掌に空いた穴から

漆黒の血液が出てきて、螺旋状になってベルグォールの切り裂き攻撃を防いだ。攻撃した

ベルグォールの爪はボロボロになっており、

爪の先端が取れそうになっていた。


『はぁ...、アビリティ『血鎌』長鎌形態。』


そう言うと、周りを螺旋状になって守っていた魔血が形を変えて、長い大鎌となった。ベルグォールは恐怖し、全速力で走ってゆりから離れていく。


『せめて私の養分になって...『魔血アビリティ『大長鎌・薙ぎ払い』。』


魔血で足の血液循環を速くし、ベルグォールの所へ一瞬にして追いつくゆり。そのまま、

ベルグォールを薙ぎ払って真っ二つに斬り裂いた。


『ガァァァ!!....ァァァァ...。』


ベルグォールは、悶え苦しんだ後死んだ。


『....ふぅ。やっと終わった。もう戦うのは

懲り懲りだよ...。』


地にベタッと着き、上を向いて一息つくゆり。

その時、血鎌となっていた魔血は血液に戻り、

ゆりの右の掌にある穴に戻っていった。


『はぁ...、『魔血』このアビリティの使い方が難しいよぉ。自身の血を使って武器を形作るから、その分体が重くなっちゃうし。倒した魔物の生き血を摂取しないと死んじゃうから、

ギリギリの生活だよ...。』


そう言ってると、森の奥から光りが輝いて見えた。


『あそこ光ってる。やっと森から出られるのかな?』


ゆりはそう言うと、光りがある場所へ向かって歩いていった。着いた先には、緑あふれる大地が広がっていた。山や川なども先が見えない程広がっていた。ゆりの目は輝いてた。


『わあぁ...!!!こんな景色見るの初めて!』


ゆりは、その景色を見て呆然と立っている。

見とれていると草原の大地を馬車で逃げ回っている人間がいた。後ろから、ベルグォール

が早いスピードで追いかけていた。


『ひぃぃぃ!!!。だ、誰か〜!助けて〜!

ベルグォールに出くわすなんて聞いてないぞ?!』


『グォー!!!』


1人の青年が、手綱を握りしめながら大声で

助けを呼んでいる。


『うーん...、あそこまで走っていくのは大変

だし、けど他に方法は....。』


頭を悩ませていた時、ゆりの目の前に一羽の

小鳥が飛んできた。するとゆりは、いい事を

思い付いた。


『あ、そうだ!魔血で翼を再現して飛べばいいんじゃないかな...?やってみるか。』


『アビリティ魔血『黒翼』。』


ゆりがそう言うと右の掌から血液が出てきて、

背中の方へと移動して鳥の翼を形作った。その色は赤黒い漆黒の翼だった。


『よし、出来た。....ッッッッとう!』


そう言うと、ゆりは軽く助走をつけて崖から

跳んだ。すると魔血で形作った翼が大きく広がって高度を維持している。


『....うん。翼に形作っても手足のように動かせる!。よし、急いで助けに行こう...。』


そう言った直後、物凄い速さで空を駆け抜けていくゆり。あっという間にベルグォールと

それに逃げる青年の所まで追いついた。


『アビリティ魔血『血鎌一閃』...。これで大丈夫かな...。』


左手の掌から魔血を出して血鎌を形作るゆり。

青年を襲おうとしていたベルグォールを横から血鎌で斬り払う。ベルグォールは真っ二つになって地面に倒れた。周りの地面は血飛沫になって赤く染まっていた。


『あ、あのベルグォールを...一瞬で倒したのか?!一体...誰が?』


真っ二つにされたベルグォールの元に近寄る青年。本来倒すのが難しい筈の魔物が一瞬にして倒された為、困惑している。その時、青年の近くに禍々しい魔力を持ったゆりが近づいてきていた。


『ッッッッッッ!!!?こ、この魔力量?!ベルグォールの倍以上...いや、遥か上か。底が知れないぞ!....』


ゆりの魔力を探知した青年は顔が青ざめていた。ゆっくりと、ゆりの方へ顔を向ける。


『....大丈夫.......君...。』


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