Dread Vampire〜戦慄の吸血鬼〜

sira

第1話 『始まり』

アビリティと魔力が全ての世界『シャーラナク』。様々な種族がこの世界で暮らしている。だが、悪党や盗賊などの被害が多い為

1つの村が襲われて、人身売買などが絶えなかった。


『子供と金は全て奪いとれ!大人は全員始末しろ!男も女も焼き払え!』


全身に鎧と武器を持つ盗賊達。とある村の子供やお金を馬車に乗せていく。しかし、村の大人達は全員、体中を斬られて縛られて、一箇所に集められた後焼かれて死んだ...。


『へっ、俺達に歯向かうからこうなるのさ。

大人しく子供と金を渡せばいいものを。お前ら!馬車を走らせろ!今から売りに行くぞ!』

『おぉ!』


そう言うと、盗賊達は馬車を走らせて攫った子供が『人売所』(じんばいじょ)という高値の額で売られている場所へ連れ去った。林に囲まれた、近くに崖が見える一本道を走っている。


『・・・・・』


攫われた子供達は、何が起きているのか分からぬまま怯えていた。しかし、その子供達の中の1人だけ怯えずにただ呆然と座っていた子供がいた...。

その子供は髪が背中まで長く、薄く黒がかった赤髪をしており、目も黒がかった赤色をしていた。


『へい頭、あのガキ全然他のガキとは違いますぜ?妙に落ち着いている様ですが...』


その少女が不気味な程に落ち着いている事を

盗賊の頭(かしら)に伝える盗賊員。


『確かに不気味だが、変に暴れるよりかは断然いい。それに、あの髪色や瞳の色は買い手が大いに喜んでくれるのさ。俺達盗賊や、買い手では、『稀子』(まれご)。そう呼んでいるのさ、100年に1人産まれるかどうからしい。体質やアビリティ、魔力量も桁違いと聞く...。』


『そ、そうなんですか!?じ、じゃあこいつを売れば俺達!一生遊んで暮らせる金が手に入るじゃないですか!』


冷や汗を流してしまう盗賊員。頭の隣で慌てふためく。


『だが、その稀子は少し特殊でな...アビリティの目覚めに条件が必要な奴もいるんだ。その条件が分からなくては、上の連中に追い返されちまう...。』


自分の爪を軽く噛んで目を細める頭。


『まずは何としても、このガキ達を売りに出して報酬を貰うぞ!』


そう言った次の瞬間、突然地面がグラグラ揺れて盗賊達と攫った子供達が乗っている馬車が馬と共に転倒し、それと同時に崖が崩れて

下の方へ落ちていった...。


『頭〜!!!』


他の盗賊員が、落ちた頭の馬車に向かって

大きく叫ぶ。


『.......うっ!...こ、ここは、崖の下か。急な地面の揺れと崖の崩壊...。まずは商品の場所を探さなければ…!』

『アビリティ『周辺探知』!』


盗賊の頭は、頭部から血を流しながら自身の持つスキルを発動した。『周辺探知』、

自身からおよそ5〜10kmの範囲にいる生物を

探知出来るスキル。使う際、発動者はその場から動けない状態になる。

頭(かしら)の周りに、鋭い木の枝に刺さったりボコついた岩にぶつかって死んだ子供達が幾つも探知された...。


『くそっ!全滅か!!!、せっかくの大事な

商品が...!』


盗賊の頭が頭を抱えてうずくまると、遠くに、地面に着いて気絶している黒がかった赤髪の少女が探知に反応した。


『あ、あのガキ...生きてたのか!、よし、まだだ!あのガキを持っていけば多少の金は入ってくるはずだ...!』


足の損傷も激しかった為、少女の元へ足を引きずりながら歩いて向かう頭。そして、辛うじて少女の元に着くと肩に担いでまた歩き始めた。


『(だがしかし、こいつは何故あの高さから落ちたにも関わらず軽傷で済んでいるんだ?)』

『まさか、人間じゃあないとでも言うのか?』


チラッと少女を見た後、そのまま前を向いて歩き続ける頭。その時、気絶していた少女が

目を覚ました。


『・・・ここは何処...?血が...沢山出てる。』

『喉が...渇いたなぁ・・・』


少女は、そう小声でボソボソと言うと自分の頭から出血し、垂れた血を舌で取り、口の中に入れた瞬間...。


『アビリティの条件を満たしました。』

『アビリティ『魔血』が解放されます。』


と言う言葉が聞こえた直後、少女の体から

溢れんばかりの魔力が出てきた。その時、周りの木々が騒めいている。


『なっ!この魔力量!、くっ!こいつ、条件を達成しやがったな?!』


そう言うと、少女から距離を置く盗賊の頭。

頭から少し汗が滲み出ていた...。


『おじさん、悪い人...だよね?』


盗賊の頭の方を向いて、首を傾げる少女。


『へ、おじさんじゃねぇよ。俺の名前は『ソルド』だ。覚えておきな...。』


そう言うと、ソルドは少女に向けて長さ1メートル程の

ナイフを出す。


『嬢ちゃん...名前は?』


ソルドは、静かに名前を聞いた。少女は、

その質問に答える。


『私の名前は...『ゆり』。』


ゆりが言い終わる直後に、ソルドはゆりの心臓目掛けて突き刺した。体からは血液がドクドクと出てきている。


『カハッ...。』


口から血を出して、ゆりはその場で倒れる。


『悪いな、本当は売ろうと思ってたんだが...

俺達に危険を及ぼす芽は例え少女だろうと殺す!。それも俺の仕事だからな...。』


ソルドはそう言うと、そっと立ち上がって、

森の中へ歩いていく。その時、ソルドに刺されたゆりの手が動いた。


『.....ッッ。』


ソルドはその音を微かに聞き取り、ゆりの方へ体を向け、ナイフを構えた。不気味に感じたソルドは物凄い悪寒を悪寒が走った。


『な、何故だ!俺は確かに、あいつの心臓を突き刺したはずだ!?どうして生きているんだ!』


ソルドが慌てながら叫ぶが、ゆりはゆっくりと体を起こしてソルドの方を向く。


『刺したから、やり返してもいいよね...。』


そう言うと、ゆりは掌に大きい穴が空いた右手を前に出してアビリティを発動させる。


『アビリティ『魔血』発動.....。』


そう言った瞬間、ゆりの穴が空いた右の掌から大量の血液が出てきて、それが徐々に形を作っていく。そうして出てきたのは、禍々しい赤黒色をした長鎌だった。その長鎌からは

異質の魔力を放っていた。


『け、血液から...武器を作っただと?!それが

お前のアビリティか!』


顔が青ざめながら、ゆりに聞くソルド。ナイフを持った手が異常に震えていた。


『そう...私のアビリティ『魔血』。私の血は高純度の魔力で出来たもの...。この血は猛毒で、私以外が触れれば、触って三秒後に死ぬ。』

血鎌の先端から垂れた血が、周りの草を腐らせていた。


『だが所詮!お前はアビリティを手に入れたばかりのガキだ!訓練した俺に勝てる訳...!?』


そう言った瞬間、ソルドの目の前にゆりが血鎌を構えていた。


『魔血アビリティ技『血鎌・薙ぎ払い』。』


血鎌で大きく振りかぶって、ソルドに向かって薙ぎ払うゆり。ソルドは咄嗟に防御したが

易々と、防御アビリティを発動して纏ったナイフを破って体を切り裂かれた。ソルドは、一瞬宙に浮いた後、地面に落ちた。


『へ....へっ。俺が...判断を誤る...なん...て、

な........。』


ソルドは辛うじて振り絞った声で言うと、

そっと息を引き取った...。周りには血が 飛び散っていた。


『....さようなら。』


そう言うと、ゆりはその場にあった一本の花を死んだソルドの近くに置いて森の奥へ歩いていった。目的のない長い...長い旅が始まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る