隣の席の赤井さんは何かが気になるようです

トランク

隣の席の赤井さんは何かが気になるようです。

ここ最近視線を感じる。

俺が授業中下を向いた時とかボーっとしている時とかだ。

気のせいかと思ったけれどやっぱりどう考えても隣の赤井さんからの視線を感じる!


なんでだ?なんで赤井さんが俺の方をチラチラ見るんだ?別にクラスでトップクラスのイケメンでもないし、勉強は結構できる方だけど運動は全然だぞ?社会の窓チャックがずっと開いているわけでもなかったし、カレーの汁でも制服についていたのかとも思ったけれどそれも違かった。


赤井さん自身はモテると言うよりクラスの高嶺の花っていう感じで暗黙の了解みたいなものがあり、クラスの奴らが告白するようなことは無くなった。たまにその了解を知らない奴が突撃してそっけなく対応されて心が傷ついて帰る光景が見られる。


俺自身も初めの頃は気になっていたけどあんなにイケメンたちが告って死んでいく姿を見ると流石に諦めもつく。







「なあ健二。最近赤井さんからの視線を感じるんだが」


「はあ?赤井さんから?そんな訳ないだろ」


「いや嘘じゃないって。ガチで見られてるんだよ」


「それは気にしすぎだろ」


今相談を聞いてくれているのはクラスメイトの健二だ。中学からずっと一緒で高校三年間クラスが一緒となかなかの運をしている。


「けど視線を感じた時赤井さんの方みたらいっつも視線あってすぐに目逸らされるんだけどな〜」


「それ窓の外見てただけじゃないのか?お前の席の方が窓側だろ?」


「いやそうなんだけどそんなに何回も外見るか?」


確かに健二のいう通り俺の席は赤井さんの席の隣で、赤井さんが外を見ようとすると俺の方を向く形にはなる。しかし授業中に数回ならまだしも二桁単位であるのは流石におかしい。

3年になってから初めて席替えしてからずっとだ。


俺の席が一番後ろの席だから前の奴らは気づかないだけかもしれないが絶対に見られてる。


「気になるんだったら本人に聞けばいいんじゃないのか?」


「いや本人に聞くのはちょっとな」


「気にしなければ良いんじゃねぇのか?」


「まぁそうだけど、あの赤井さんがチラチラ見てくるってことは俺なんかしたんじゃって思ってな」


「あれじゃねぇか?お前の使ってるシャンプーの匂いがきついとか」


「え?そんなに匂うのか!?」


「冗談だよ、冗談。まあ今日の掃除の担当赤井さんとお前なんだからその時も見られたら聞いた方がいいんじゃなね?」


「そうするよ。ありがとう」












「中居くん。先生に聞いてきたけど適当に掃除しといてだって」


「オッケー。赤井さんありがとう」


五時間目の授業が終わってみんなが講習やら部活やらに行って、教室に残っているのは今日の教室の掃除当番の赤井さんと俺だけだ。掃除する前にどこを重点的にしてほしいかを先生に聞きに行かなければならない。と言っても大体が適当でだが。


「じゃあ黒板周りとゴミ捨てだけして終わろうか」


「うん…」








やっぱり視線を感じる。意識してたからか分かったけれど赤井さん俺のことずっと見てないか?俺が他の方向を向いてたりするとき、視界の端の赤井さんの顔がずっとこっちだ。

やっぱり聞いてみるしかないのか?


けど『赤井さんさっきから見てるけど何?』って言ったら絶対怖がるし、自意識過剰って言われるよなー。誤魔化しながら聞くしかないか。


「赤井さん。最近さ、授業中に誰かから見られてる気がするんだけど誰かわからないかな?赤井さん隣の席だから何か知ってるんじゃないかって思って聞いたんだけど」


「え!?い、っいあや知らないよ」


絶対赤井さんだ。この反応はそうだ。絶対赤井さん俺のことを見てる。やっぱり気のせいじゃなくて赤井さんが見てたのか。


「そうかー、ごめんな変なこと聞いて」


「ぜ、全然大丈夫だよ」


「あ、あの中居くんってどうやって勉強してるのか教えてもらってもいいかなっ…?」


「え?…ああ、いいよ。どの教科?」


まさか赤井さんに勉強法を聞かれるとは思ってもいなかった。けど赤井さんって勉強できるイメージあるけれどどうしたんだ?


「数学なんだけど……今まで授業内容は大丈夫なんだけど数Ⅲに入って不安なところがあって……」


「今日授業でやったところ?今日用事ないから教えれるけど」


「え!いいの!?ありがとう!」


おおぅ。そんな満面の笑顔向けないでください…。かわいい。

赤井さんがおれのこと見てたのはこのことを言い出せなかったからか?

赤井さんの笑顔が見れただけでも満足です。


「ここなんだけど…」


「ああこの証明は……










近い。赤井さんの距離が尋常じゃないほど近い。俺が座った後から肩が触れるくらい、というか触れてる。


「あっ赤井さん。近くない?」


「いいの、こうしたいから」


えっ???


「えっ!?いっいやいまのなし!」


今好きで近づいてるみたいなこと言わなかったか?

今まで見られてたのも勉強のことが聞きたかったんだよな?


「あの赤井さん。最近俺のこと見てない?」


「い、いやー見てないよー。気のせいだよー」


完全な棒読みだ。


「その反応絶対見てるでしょ。俺なんかした?」


「……………何も。ただ中居くんのことがちょっと気になってただけ。別に中居くんが何かしたって訳じゃないから。」


「なんか気になることってあった?」


「と、特にないけどただこれからも勉強教えてほしいなーなんて…。」


「俺でよければ全然いいけど」


「本当!?ありがと!」


だいぶテンションが上がってそう答えた赤井さん。

赤井さんとの放課後の勉強会がこれから始まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣の席の赤井さんは何かが気になるようです トランク @toranku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ