第9話 地下のキング&クイーン


地下闘技場で開催されるトーナメントに参加する事になったタケミとネラ。


初戦を難なく終えて、二人は順当に勝ち上がっていく。


そして気付けば決勝戦となっていた。


「あっという間だな」

「当たり前だ。こんな所で白熱バトルしてるようじゃ、今後困る」

タケミとネラはこれから試合という事で控えていた。


「次の相手ってどんなのだろうな」

「さぁな」

「さぁなって、お前ここにしょっちゅう来てるんだろ?」

「どうせ、もうすぐご対面できるさ」

タケミとネラはそう言って決勝戦に挑む。



『さぁッ!!いよいよ決勝戦ッ!!ここまで快進撃を続けたカヅチ・タケミッ!!彼を迎え討つのはキングゥゥゥ!!』

ツギハギスーツの実況がライトアップされたリングへ観客の注目を向ける。

別のライトがリングへと向かうタケミともう一人の男を照らした。


赤コーナーから入場してきたのはキングと言う男。金髪で整った顔の優男風な青年だ。

その反対側、青コーナーからタケミもリングに入る。


『この闘技場に君臨する王者!!彼に数多の戦士が挑みましたがいずれもこの闘技場に沈められましたッ!!』


観客から歓声が上がる。


「おー、すごい人気」

タケミは観客がヒートアップしている所をみてそう呟いた。


『クイーントーナメント決勝戦の闘技者の登場です!!』

実況がそう言うとライトが今度はネラと相手の女を照らす。


『こちらも快進撃を続け瞬く間に勝ち上がりました死神ネラッ!!そしてぇえクイーンの登場だぁぁッ!!』

タケミ達がいるリングにネラとクイーンが上がる。


『美しくそして強い!この地下闘技場の女王と呼ぶにふさわしい彼女が今回も連勝記録を更新するのか!はたまた死神によってここで記録は止まってしまうのか?!』


『各挑戦者とそれを迎え討つキングとクイーンが出そろった!!決勝戦は特別ルール!キングとクイーントーナメントの両試合を同時に行います!!』



「へぇ、一緒に戦うのか」

「ま、やる事は変わらねぇけどな」

タケミとネラはリング中央に出る。


対戦相手のキングとクイーンも中央に上がって来た。


「キングか、カッコイイ名前だな、よろしく」

「君随分と強そうだね。よろしく」

タケミとキングは握手をする。


「クイーンって、安直なあだ名。好みじゃねぇが貰ってやるよ」

「ちょーし乗るなよ、死神ッ!!」

ネラとクイーンはもうすでに殴り合いそうな勢いで額を付け合わせている。


『それでは!!闘技開始ッッ!!』

勢いよく開始のゴングが鳴り響く。


ゴングと同時にキングとクイーンが仕掛けて来た。


「素早いフットワーク、ネラがやってたのとも違うな。こんな感じか?」

キングの攻撃を避けたり受けながら、タケミは相手の足さばきを真似していた。


(この巨体でなんて俊敏性ッ!!良いのが入ったと思っても全然効いた感じがしない。まるで岩山を殴っているような気分だ。こんな少ない魔力量の奴の癖に、油断できないな)

開幕から怒涛の攻撃を仕掛けるキング、対峙してすぐにタケミの異常さに気付く。


「もう少し派手にいこうか……」

そう言うと彼の両手が光を纏う。


「おお……!」

タケミはそれに興味津々だ。


『早速キングが仕掛ける展開!!それを耐え抜くカヅチ・タケミ選手!!』


「うおおお!すげぇぞあのデケェ兄ちゃん!!」

「キングの攻撃をあれだけ受けて倒れねぇッ!!」


観客も盛り上がっているようだ。



「向こうも盛り上がってるな。こっちももう少し盛り上げるか」

ネラは迫って来るクイーンに向かって構える。


「シッッ!!」

鋭いミドルキックを放つネラ。


「グっ!」

クイーンはそれをガード。


(なんて重い蹴りを軽々と出してきやがる!)

ガードした腕に感じる衝撃に、驚くクイーン。


「なぁ、お前ら勇者だろ?」

驚いたクイーンをみて、ネラはニヤリと笑ってそう言った。


「ッ!!」

クイーンが目を見開く。


「やっぱりな、少し他の連中と感じが違うが。その魔力量に身体能力……にしてはコアが少し変だな?そうとう下手くそな女神にでも当たったか?かわいそうに」

嘲笑するネラ。


「クッ!黙れッ!!!」

クイーンが一気負いよく殴りかかって来る。


難なくそれを避けてステップを踏むネラ。


「クソ!これならどうだ!アイアンリッパ―ッ!!」

そう叫ぶとクイーンの両腕に金属性のかぎ爪が現れた。


観客が歓声を上げる。


『おおっと!これはどういう事だッ!?!クイーンの腕に爪のような刃が現れたッ!!闘技場のルールとして武器の持ち込みは禁止ですが、これはクイーンから発生したもの!つまり全然セーフッ!!なのです!!』


どうやらルール的にはOK、観客の反応を見るからにクイーンは常習的にこのかぎ爪を使用しているようだ。


「セーフかよ!」


「ぶつ切りにして野犬の餌にでもしてやるッ!!」

相手がかぎ爪を振り回して迫る。


「はっ!綺麗なお爪ですこと、ネイルでもしてやろうか?」

「逃がすかッ!!!」



するとリングの反対側で強い発光が。


『こちらでも大きな歓声が上がるッ!!キングの光の矢がカヅチ・タケミを襲うッ!!勿論あの弓も矢もキングから発生させたものなでセーフですッ!!』


キングは青白い光を放つ弓と矢でタケミに攻撃を仕掛けていた。


「へぇ、さっきよりも全然強いじゃねぇか。これ最初からやればいいのに」

その攻撃を受けながらタケミは笑う。


「ッ!!」

(これを使ってもその程度かッ!?)

タケミの底が見えぬ耐久性に驚くキング。



「タケミッ!!さっさと終わらせるぞッ!」

「え、もうか?分かった!」


ネラに呼ばれタケミは中央に走っていく。


「こいつ上に飛ばしてくれ!」

ネラはそう言ってタケミの横を通り過ぎていく。


「逃がさねぇって言っただろッ!!」

クイーンが彼女の背中目掛けかぎ爪を振るう。


「させねぇよ」

かぎ爪を掴むタケミ。


「なッ!?鋼鉄すら斬り裂く爪を素手で?!」

「丈夫な手だろ?メッチャ鍛えたからな。そら行くぞッ!」

そう言ってタケミは爪を掴んだままクイーンを振り回す。


「クソッ!!」

キングがタケミ目掛け矢をつがえる。


「ばぁッ!」

ネラが急に彼の前に飛び出す。


「うわッ!」

「隙ありッ!そらッ!!」

ネラは相手の襟首掴んで弧を描くようにして投げ飛ばす。


キングはタケミとクイーンの方へと飛んでいく。


「タケミッ!」

「了解!そーれ!たかいたかーいッ!!」

タケミは振り回した勢いでクイーンを飛んできたキングへとぶん投げる。


「うわああああッ!!?」

「わあああ!!」

キングとクイーンは顔面から衝突。


「おし!フィニッシュだッ!」

「おう!」


空中で激突し、意識もうろうとしている二人に各々跳びかかる。


タケミはキングに、ネラはクイーンに。


そして相手の胴体を掴み、頭が下に向くようにしてリングに叩きつけた。


「がぁ!!?」

「グハ!!」


プロレスで言うパワーボムと呼ばれる技に酷似した状態でリングに衝突、相手は泡を吹いて気絶。


『け、け、決着うううううッ!!強烈なコンビネーション技でキングとクイーンを同時撃破ッ!!これにより新王者二人が誕生だァァァァッ!!』


「よーし、報酬ゲット!」

「ふー、こういう戦いは初めてだった!結構面白かったな」

タケミとネラは勝利のハイタッチをした。

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