No.10 シャーロットは不思議めな天才


担任のヒトツバシ先生に頼まれ、ユキチカ達はシャーロットという生徒の自宅へ向かう事に。


様々な機械が積み重なって出来た山、その中心に彼女がすむアパートがあった。

そのアパートの地下でユキチカ達は目的のシャーロットという少女に出会う。


「あー、えっと、いらっしゃい。そ、そのシャーロット、です」

あまり人と話すのに慣れていないのか少しどもりながら、シャーロットと名乗る少女は振り向いて挨拶をした。


彼女は綺麗なプラチナブロンドの長髪、大きな銀色の瞳、外に殆ど出ない事が分かる色白の肌に端正な顔立ちと、まるで職人が作り上げた精巧な人形のようだった。

だが本人はそんな事に興味がないのか、髪はボサボサで顔の至る所に黒い汚れがついたままだ。恐らく周囲の機械をいじってた際の油などの汚れだろう。


(うわー、めっちゃ綺麗な人)

ジーナは思わずその容姿に見惚れてしまう。


「どうもー」

ユキチカは手を振ってあいさつをした。



「……」

「……」

「……?」


少しばかりの沈黙が流れる。


(どうしよ!どう話せば良いんだっけ?!考えてた筈なのに全部飛んだ!!)

沈黙に焦りを覚え始め思考がグルグルするシャーロット。


するとカチャカチャと音をたてて、小さいロボットがお茶を運んで来た。

「ヨロシケレバ! オクチニ アエバ!」


そう言ってユキチカとジーナにお茶を運ぶロボットたち。


「ええ!なにこれ!?」

「かわいいね」

ユキチカとジーナがしゃがみ込んでそのロボットをみる。


球体状のロボット、その球体ボディからチューブのような手足が出ている。


「え!ああ!それはね、ころちゃん、私が作ったの!素材からも拘ってねー」

嬉しそうに話し始めるシャーロット。


(ナイスころちゃん!話題ができた!)


(あ、楽しそうに話してくれてる。良かったー)

ジーナも嬉しそうに話すシャーロットをみて少しホッとする。


「外のエンデスもカッコ良かった!これもおもしろい!いいなぁ!」

「へ?ほ、本当?エンデス分かってくれたの超嬉しい!へへへ」

ユキチカが自分の作品たちを絶賛してくれるのでシャーロットは照れる。二人はしばしエンドレスデストロイヤーの神回について語りあっていた。



「あのーシャーロットさんはどうして私達を家に入れてくれたの?」

場の空気がほぐれたと感じたジーナが質問をする。


「ここに来た子たちは顔も見たことないって言ってたから、意外だなーって」

確かに今まで誰もシャーロットを見たことが無かった。もしあったら学校中で噂になるだろう、とんでもない美少女が学校にいると。


「あーっとそれは私が単に人が苦手なだけ、あ!でもあなたたちは違う!」

彼女はそう言ってモニターを切り替える。


「これ!これみてね絶対会いたいって!」

そこには先日アンドロイドと戦っているユキチカ達の映像が流れていた。

 

「えっ、これって」


「この映像入手するのギリギリだったんだよー。これが起きてから10分もしないでデータ完全に消されちゃったからね」

ユキチカの方に振り向くシャーロット。


「ねぇ、ユキチカってさ、機械の体なんだよね?!」

彼女は興奮気味にユキチカに近づく。


「うん、そうだよー」

特に隠すつもりも無く答えるユキチカ。


(まあこれ見られたんじゃバレるよね)

映像には丁度ユキチカの腕が落ちた所が映し出されていた。


「あなたも!アンドロイドを殴り飛ばしてたよね?!相手は戦闘用に改造せされてるのに!あなたも何か仕込んでるの?特殊合金とか!?」


今度はジーナに詰め寄って体に触るシャーロット。


「ひゃっ!な、なに?!」

急に体を触られ間抜けな声が出るジーナ。

どうやらシャーロットは人との距離感が一般的なものとだいぶ違うようだ。


「あなた達には興味が尽きなくて、だからよんだの」

ジーナに顔を近づけて嬉しそうにそう話すシャーロット。


「っ、そうなんだ」

(くぅ、ちょっとドキっとした)

超至近距離でみるシャーロットの顔に落ち着かない様子のジーナ。


「にしてもこの身体どこからどこまでが機械なの?」

シャーロットはまたユキチカの方に目を向けていた。


「全部だよ。カラダとられちゃった」


「え!?凄い100%?!ん?身体盗られたって?」

当然のことを質問するシャーロット。



「……とまぁ、そんな感じでユキチカは自分の身体を探してるんだ」


「うん、このカラダも好きなんだけど前のも大事なんだー。だから探してるの、ジーナとウルルにも手伝ってくれてるんだー!」


「まあまだこれと言って何もしてなけどね」

ユキチカとジーナから簡単に事のなりゆきを聞き、うんうんと頷くシャーロット。


「なるほど、そういうことなんだ。ねえ、それ私も手伝うよ!」

「やったー!」

トントン拍子で話が進み。気付けばシャーロットもユキチカのカラダ探しに協力する事になった。


「え……そんな簡単に?まあでも確かにこの部屋を見る限りめちゃくちゃ心強いとは思うけども」

「だってユキチカの身体に興味あるし!」

「言い方ッ!」


「あ、もちろんジーナの身体にも興味あるよ!」

「だから言い方ッ!!」

また急接近してくるシャーロットにジーナが言う。


「そ、そういえば!何でそんなに機械とか好きなのにウルルちゃん、アンドロイドは入っちゃダメなの?」

ジーナはまた体をまさぐられる前に話題を切り替える。


「それは……ウルティメイト社だから」

急に声のトーンが下がるシャーロット。


「え、それってどういう……」


「なんでシャーロットは学校行かないの?」

ユキチカの質問にジーナが固まる。


(会話ぶった切ってなんて事きいてんのッ!!?)


不登校の、それも初対面の相手におよそ軽々と聞けるものではない。しかし、ユキチカにそんな一般的な感性がある訳も無い。興味があったから質問しただけ、彼にとってはそれくらいのものなのだ。


ジーナ同様に予想外の質問をされて呆気にとられるシャーロット。


「え?あー、えっと、さっき言った通り人が苦手で。学校はテストもちゃんと点数はとってるから、先生も無理しないで良いよって言ってくれるから。ここでずっと作業していたいし、それになんか……もう今更行ってもなぁって、ちょっと行くタイミング逃したとういうか……」


徐々に言葉が弱々しくなっていくシャーロット。


「じゃあいっしょに行こ!」

ユキチカの発言を聞いて頷くジーナ


「うん、そうだね、タイミングって言うなら今がいいタイミングじゃない?転クラしてきたんだし」

ユキチカとジーナがシャーロットを誘う。


「え、いいの?」

「トモダチは一緒に学校行ったりするものってお父さんも言ってた!」

「いいね、家の方向も同じだし、登下校も一緒に出来るね」


「本当?!じゃあ行ってみるよ!学校!」

シャーロットはパッと表情を明るくさせて答える。


「やったー!」

「まあ来てみて、それで改めて判断したら?私達も手伝うし!」


こうしてシャーロットは次から学校に行く事を決めた。



「またねー!」

「じゃあまたね!」

「うん、気を付けて帰ってね」


シャーロットは作業部屋から出て行く二人に向かって手を振る。


「友達かぁ……ユキチカにジーナ、へへへっ」


シャーロットはそう言って嬉しそうに笑った。

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