No.9 転クラしてきた生徒


アンドロイド達の襲撃があった日から数日後、ユキチカはクラスの先生に頼み事をされていた。


担任のヒトツバシ先生、温和な雰囲気で彼女がいるといつも場が和むという事で評判だ。最近はユキチカにも慣れて来たようで、彼の前でも緊張を見せなくなっていた。


「今日は学校の帰りに寄ってほしい所があるの。今日から新しくこのクラスに移って来た、シャーロットさんのおうちなんだけど」

「いいよー!」

ユキチカは二つ返事で答える。


「ユキチカくん大丈夫?シャーロットちゃんの所はね……」

他の生徒が心配そうにそう言った。


「ウルルとジーナがいるから大丈夫!」

ユキチカの発言にクラス内がざわつく。


「え!?ウルルちゃんはともかく、ジーナちゃんも?!いつの間に二人はそんな関係に!?」

キャーと歓喜の声が上がる。


「いやっ違う!そういうんじゃないって!やめて!拍手やめて!」

ジーナが立ち上がって否定する。


その話を聞いてニヤニヤする隣席のハナ。

「ジーナちゃんってそういうの興味ないって感じだったのにー、したたかぁ」


「違うっって!ちょっとユキチカ!」

ユキチカに向かって声を上げるジーナ。


「ユキチカって!?やっぱり呼び捨てするような仲なの!?」

再び歓声が上がる。


「だめだ、こんな状態じゃあ何言っても悪化しかしない!」

加速度的にクラスメイトの中でジーナとユキチカの関係性が構築されていく。


「ではウルルさん、ジーナさんにもお願いしちゃおうかしら」

ヒトツバシ先生はそう言ってほほ笑む。


「勿論です私はユキチカ様の従者ですので」

「私は……!」

ジーナが何か言おうとした時


「ダメかな?」

先生が一押しをしてくる。


「くっ!分かりました……」

ジーナはついていく事になった。



学校が終わり、3人はシャーロットの家へと向かう。

「ユキチカのせいで皆に誤解されたじゃん……」

「ん?ごかい?」


ため息をするジーナ。

「はぁもういいや。どうせこれから行くシャーロットって人の事知らないんでしょ?まさか彼女がうちのクラスに転クラするなんてね」


「私のデータべースにもあまり情報は書かれていませんね。身体測定や健康診断のデータすらありません」


「彼女は入学してから一度も学校に来てないからね

ジーナはどうやら少しばかりシャーロットという生徒について知っているみたいだ。


「前のクラスメイトが何回か彼女の家に行ったんだけど、一度も顔すら見れなかったって。みんな口にはしてないけど不気味がってたね」

シャーロットは同学年では有名人らしい。



目的地に到着した、のだが随分と異様な雰囲気に包まれた場所だった。

よく分からない機械の山に囲われた所に2階建てのアパートがあった。


「……なるほど、これは普通のお宅ではないね」

その光景をみてジーナが言う。


アパートに向かって機械だらけの山の間を進んでいくと


『ウォー!よく来たなカスったれめ!』

突然、悪口を吐きながら黄金に煌めくロボットが、機械の山から両手を挙げ飛び出して来た。


「ええ!な、何こいつ?!」

ビックリしたジーナは、一歩下がって構える。


だがロボットはその場で固まって動かない。


「これエンドレスデストロイヤーだ!いいなぁー!」

ユキチカが目を輝かせながらそのロボットを観察し始める。


「エンド……何?」


「ユキチカ様が好きな番組です。主人公ホロボ・ス・コノヨが搭乗する巨大ロボですね。全身に世界を破滅に導けるレベルの武装が施されていて世界の平和を守っているんです」


「それで本当に世界守ってる?!」

全体的に不穏な設定にツッコミを入れるジーナ。


「もっとないかな!」

「目的忘れてない?あとでシャーロットさんに見せてもらえばいいでしょ」

ユキチカはもうアパートに向かうよりもロボを探すモードに入ってしまった。


(まあ見せてくれるかは分からないけど)



「ごめんくださーい、シャーロットさーん」

アパートの二階の一番左端、そこがシャーロットの部屋だ。

ジーナがインターホンを押して呼びかける。


(ここに住んでる人ってどんな人なんだろう)


「ヨグ、ギダナ!」

「え、何?だれ?」

すると重低音が効いた機械的な声がインターホンから聞こえた。


「ドオルガ、ヨイ!」

扉が開く。


「おじゃましまーす」

「え、謎の重低音ボイスはスルーなの?」

ユキチカは早々に部屋の中に入る、ジーナもその後に続いて入る。


「ア!マデ!アンドロイドハ、ソトデマッデテ!」

ウルルが入ろうとした時先ほどの声が彼女を止めた。


「え、そうなの?じゃあウルル!他のロボがいないか先に探してて!」

「畏まりましたユキチカ様、何かありましたらすぐに御呼びくださいね」

ウルルは外で待機する事に。


(なんでアンドロイドはダメなんだろう、これだけ機械に溢れたような場所に住んでる人ならむしろ歓迎しそうなのに……)


快諾するユキチカとウルルと違い、ジーナは不思議に思った。



とりあえず部屋の中に入ったユキチカとジーナ。


部屋の中は一般的な雰囲気でこれといって特徴的なものは無かった。


「あれ、至って普通の部屋だ。外みたいに色んな物で溢れてるかと思った」

外と違って部屋は一般的な家具しかなく、しっかり掃除も行き届いている。


「なにこれ?よいしょ」

ユキチカは部屋の奥にあった本棚から本を一つ取り出した。

するとガコンッ!という音がして本棚がゆっくりと動きだした。


本棚が下へと沈んでいく、すると下へと向かう階段が現れる。

「おー!隠し通路!」


「ちょっとそれは私でもワクワクするな」

二人は現れた通路を進む。


一本道の通路を進むと、機械や様々な色の配線で彩られた部屋にたどり着く。


そこら中に機械があり、それに使用する工具が壁にかけられていた。

足元は良くみないと足を引っ掛けて転んでしまいそうなほどの配線が。


そんな部屋の中心には大きなモニターがいくつも天井から吊られていた。


部屋の中心に近づくとその前に誰かが座っている事に気付く。


ユキチカとジーナがその人物の元にたどり着くと、相手は椅子をくるりと回し、振り向く。


「あー、えっと、いらっしゃい。そ、そのシャーロット、です」

綺麗なプラチナブロンドの長髪を揺らしながら、その少女は言った。


彼女がシャーロット、機械だらけの山の主だ。

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