No.11 天才ちゃんの初登校

シャーロット宅に訪問した翌日、ユキチカとジーナは共に登校するためにシャーロット宅の側で待ち合わせをする事にした。


「ジーナおはよー!」

「お、来たね。あとはシャーロットか」

先に到着したジーナの元にユキチカとウルルが現れる。


「私も一緒でよろしいのでしょうか……」

昨日外で待つようにと言われ、相手は自分に接したくないのではないかと気にしているウルル。


「大丈夫、きっとシャーロットもウルルちゃんと仲良くなれると思う」

ジーナがそう言ってウルルを励ます。



話しているとトボトボと人影がやって来るのが見えた。


「あ!シャーロックだ!」

「シャーロットですよワトソン様」

ユキチカ達が手を振る。


「うう、日光眩しい……吸血鬼ってこんな気分なのかなぁ」

もう若干足元がフラフラしているシャーロット。


「ああ、もうやばそう」

ジーナが、その様子をみて言う。


「いきなり朝一ってのはキツイよね。もう少し来やすい時間帯でも良かったのに」

シャーロットに近寄ってジーナが話しかける。


「み、みんなと行きたいから。それであなたは……」

ウルルの方をみるシャーロット。


「もうしおくれました、ウルルと申します」

スカートの端を軽く持ち上げ、ウルルはお辞儀をする。


「あ、ええ、えっとその……」

シャーロットは恐る恐る話す。

明らかにウルルに対し警戒している様子だ。



「シャーロットどうしたの?めっちゃ綺麗じゃん!昨日も綺麗だったけどさ!」

ジーナが話題をシャーロットに向ける、言いたくて我慢していたのが限界に達したのだろうか。


彼女が言う通り、今日のシャーロットは一段とその容姿の可憐さに磨きがかかっていた。


昨日はボサついていた白金の髪は綺麗にとかされており、うっすらとあった目の下のくまは無くなっていた。これだけで物語に登場するお姫様のようだった。


「え?え?こ、これはそのころちゃんに身なりを整えて貰っただけで……」

ころちゃん、彼女が開発した球状の小型ロボットだ。


「私もとっってもお綺麗だと思っていました!月も隠れてしまう程の美しさッ!」

彼女に詰め寄り絶賛するウルル。

さっきまでの不安な様子はどこに行ったのか。


「え?!あ、ありがとう!?」

ウルルの勢いに押され咄嗟に感謝の言葉が出るシャーロット。


(この人本当にアンドロイドなんだよね?)

感情を全面に出してくるウルルに困惑するシャーロットだった。




学校に入ると周囲を生徒はユキチカ達をみてざわついていた。


「え!?あの子誰?ユキチカ君と一緒だけど知ってる?」

「みたことないよ!あんな綺麗な子!」


周りはシャーロットが気になって仕方ないみたいだ。


「うう、なんか見られてる気がする」


「ううん、気のせい、気のせいダヨー」

「ジーナ様……」


皆はとりあえず教室に向かう。


教室についてからも皆の注目はシャーロットに向けられていた。


その後幾つかの授業を終えてお昼休みになる。

すると皆が一斉にシャーロットの席に訪れた。


それまでは誰か先に話かけないかを見ていたのだろう。しかしこのままでは誰も行かないまま一日が終わってしまう。そう思ったみんなはシャーロットに話しかける。


「シャーロットちゃん初めましてだね!」

「え?ああ、う、うん初めまして」

「シャーロットちゃんめっちゃかわいい!」


話したい欲が溜まっていたみんなはそれを一気に放つようにシャーロットに話す。



「うっ、ちょっ、ちょっとごめん!」

クラスメイトの質問攻めの途中、シャーロットはその場を走り去った。


「あ!シャーロットちゃん!」

「あー、やっちゃった。いきなり話しかけ過ぎちゃったかな」

自分達の行動を反省する生徒たち。


「うう……」

屋上にシャーロットはいた。


ジーナもそこにやってきた。

「シャーロット大丈夫?」

「う、うん。ちょっと人酔いしただけ。沢山の人に囲まれるの初めてだから」


「ははは、そうだよね。みんなもうシャーロットにメロメロだったもんね」

ジーナがシャーロットの隣に立つ。


二人がいる屋上は、高いフェンスに囲われているが見晴らしがよい。

そよ風も心地よい場所だった。


「やめてよ、ユキチカの時もあんな感じだったの?」

恥ずかしがって顔を赤らめ、顔をそむけるシャーロット。


「うーん、質問攻めにはなってたけどちょっと違うかな?みんな一目惚れってよりは世にも珍しい存在に出会った感じ?まあ私も最初はそうだったけど」


「あー、そりゃそうだよね。男子なんて映像くらいでしか見たこと無いし」


最初こそみんなはユキチカに緊張したり学校唯一の男子として接していた。だが今では学校の人気者や、底抜けに明るくて優しい友人、といったポジションとして接するようになっていた。



「そういえばどうしてジーナはユキチカに協力しているの?」

「え?」

シャーロットはなぜジーナがユキチカのカラダ探しに協力する事にしたのか、ただ疑問でならなかった。


シャーロットのようにユキチカの身体に知的好奇心を惹かれた訳でもない。


「うーん、最初は成り行きで助けちゃったんだけどね。そこでまあ、あの機械の身体の事とか聞いてさ。なんか見て見ぬふり出来ないなーってなったんだよね。だから協力する事にした、まあ私に出来る事なんて精々ボディーガードぐらいだろうけどさ」


「ジーナの家道場なんだっけ。生徒のデータでみた、カッコイイよね格闘技とか武術とか。やったことないけどさ」

シャーロットがそう話すとジーナはニコッと笑う。


「お、興味ある!?体験入門してみる?師範が直々に教えてあげるよー」

「その時はお手柔らかに。というか師範なの?凄いね」


「ばあちゃんと私しか居ないからねー。ばあちゃんは歳だからって引退したし」

ジーナの話を聞いてシャーロットが小さく笑った。


「なーに笑ってんの、なんか変なこと言っちゃった?」

「いや、ジーナも他の人と全然違うじゃんって思って。ユキチカが言ってた通り」


「確かに、ははは!」

彼女の発言を聞いてジーナも笑う。



「あ!いた!」

「シャーロット様ー!お体大丈夫ですか?」

笑っている二人の元にユキチカとウルルが現れた。


「ありがとうウルル」

シャーロットはウルルにそう微笑んで言った。


(え?!可憐でカワイイ!!)

ウルルは微笑むシャーロットをみて感動していた。


「シャロも元気になったし、パン食べよー!」

ユキチカはパンがいっぱい入った袋をみんなに見せる。


「菓子パンだらけ、売店買収した?」

ジーナがユキチカから袋を受け取る。


「今のシャロって」


「シャーロットだからシャロ!」

ユキチカは自分が食べるパンを取り出してそう答えた。


「シャロ……良いね!皆もシャロって呼んで」

ニックネームを付けてもらい喜ぶシャーロット。


「いいね!よろしくね、シャロ!」

「ではこれからよろしくお願いします、シャロ様」

「うん、みんなもこれからよろしくね」


女子三人完全に打ち解けたようだ。


「ぼくもニックネーム欲しい!ジーナ!」

彼女達が嬉しそうに話しているのを観て、ユキチカは自分も何かニックネームが欲しいと思ったのだろう、ジーナにきくユキチカ。


「あー、ユキチカ」


「えー」


こうしてシャーロットの初登校は無事に終わった。

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