2人の女の子がロケットをつくって世界を壊すおはなし

八重ナギ

プロローグ

 その日、わたしは家の中でおとうさんとおかあさんを探していた。私たちが暮らしている家にはながい廊下があり、それを渡るととなりに建っている博物館のような建物へ移動することができる。おかあさんから「お客さまのめいわくになるから、こっちには入っちゃダメよ?」と何回も言われていたけれど、わたしはこの場所がすきだったし、よるごはんの時間になっても2人ともこないから、とってもおなかがすいて我慢ができなかった。


 わたしは映画館のような大きな扉をあけて、ドーム状の高い天井とたくさんの椅子がある円形の部屋へ入った。そのまんなかには黒くて大きい筒のような機械がある。それは星空をつくる魔法の機械。そう。ここはプラネタリウム。それがわたしの家だった。


 わたしはこのプラネタリウムがだいすきだった。もう現実の空では”ほんもの”の星空を見ることができなくなっていたからだ。それは人間が膨大な数の星をうちあげたからで、都会にいてもシリウスより明るい星を数十万個もみることができた。でも、子供心ながらにそれは“にせもの”だと思っていて、わたしにとって”ほんもの”の星空は、我が家の魔法の機械が映してくれる星空だった。そこには人間がつくった星がない、”ほんもの”の星空をみることができた。わたしだけが”ほんもの”の星空を知っているという優越感さえあった。


 でも、その魔法の機械は先週から動かなくなっていた。「お金がなくて部品が買えないんだ」とおとうさんが寂しそうに言っていたのを覚えている。わたしは「魔法の機械なのに、なんでみんな見に来てくれないんだろ?」というようなことを言い。そしておとうさんはもっと寂しそうな顔をしたこともうっすらと覚えている。

 

そんな見慣れた風景の、我がプラネタリウムいちばんの特等席に、めずらしくおとうさんとおかあさんが座っていた。やっと見つけたという安心感と、放っておかれたような怒りと、なにしてるんだろ?という不思議な気持ちのまま近くに駆け寄ると、2人は幸せそうに寄り添い、そして冷たくなっていた。


そのプラネタリウムが星空を映すことは二度となかった。

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