Ms. Dreamer
【001】幕開け
図書室から一人夕暮れを眺めていると、図書室の扉が開く。
「お待たせしました、葉凪先輩!」
「お疲れ様。ごめんな、無理言って」
「いいえ、それで話……でしたっけ?」
「昔の先輩ですか……」
彼女は少し考える素振りを見せる。
「解答に困りますが、確かに言われてみれば昔と比べて"何か"が欠けているような……?」
「何かが?」
「ええ、言葉にするのは難しいんですが。何と言うか、そこにあったはずの大事な何かが抜け落ちているような……そんな感じですかね」
かくいう自分も、いきなり言葉で表現しろと言われたら同じことになるだろう。申し訳ないが、これ以上訊いても満足な解答は得られそうにないなと感じ、席を立つ。
「そうか、ありがとう。ところで荷物を持ってないが、どうしたんだ?」
バツの悪そうな顔をしている。まさかと思い、こっそり図書室の戸を開けて廊下を
「……行った方が良いんじゃないか?」
「はい……」
蚊の鳴くような声で返事をした後、橘は静かに出ていった。しょぼくれた様子は主人の帰りを待つ犬のようだ。
スマホの画面を確認する。約束の時間まであと数十分、早く着いても文句は言われないだろう。荷物を持って目的地に足を運んだ。
事務所にはコーヒーカップ片手に佇んでいる
「やあ、いらっしゃい。ささ、座って座って」
促されるままにソファに腰かける。依然として必要最低限なものが並んだ殺風景な部屋だが、こう何度も通っていると愛着というものが湧きそうである。
「じゃあ、早速だが本題に入ろうか」
浅見が差し出した舌が痺れるほどのコーヒーを口にする。
「朝桐くんに使ったであろう君の"能力"について、だ」
詩藍高校剣道部二年にして、前回の事件の犯人、『朝桐
「結末だけ簡潔に言うと、大団円。全て丸く収まった訳だが、その
――こうして、新たな舞台の幕が上がった。
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