【023】帰還
眼前には見慣れた風景が広がっている。ただ、それより早く、全身の痛みがここは現実であると告げていた。先ほどまで忘れていた痛みにたまらず片膝をつく。
「貴方、何をしたの……?」
「そんなことより朝桐はッ!」
痛みに耐えながら顔を上げる。朝桐は依然として甲冑のままだった。
「嘘……だろ……!」
「
諭されるがままに朝桐を凝視する。すると甲冑にヒビが入り、ボロボロと崩れ落ちていく。その残骸は地面に触れる前に霧散していき、
「どんな手段を用いたかは知らないけど、今回の賭けは貴方の勝ちよ、葉凪。それに、はい」
未守は右手に持っていたスマホを操作して、こちらに突き出す。
「お疲れ様、葉凪くん。未守さんから簡単に話は聞いたよ。見事反応消失、お手柄だね。色々訊きたいことはあるけど、とりあえずは身体検査をしよう。迎えに行くからちょっと待っててくれ」
それは浅見の声であった。それだけ告げるとプツリと電話が切れる。
「未守はこの後どうするんだ?」
「別に怪我の一つもないんだからそのまま帰るわよ、報告はスマホでできるんだし」
そう言う彼女は自分とは対照的に傷一つ無く、髪にさえ乱れた様子はない。
「じゃ、私は行くわね。こんな所で油を売るほど暇じゃないの」
彼女は校舎の壁と壁を
「またどこかで会いましょう」
「ははっ、本当に人間かよ、あいつ……」
「朝桐!」
勢い良く身体を起こそうとする。が、力が上手く入らない。なんとか頭を上げて朝桐を見る。
「無理すんな、葉凪。それはそうと迷惑をかけたな、すまねえ……」
「おう! 困ったらいつでも頼ってくれよ!」
一瞬面食らったような表情を浮かべたかと思えば、安らかな笑みに変わる。
彼の頬に咲いていた花は気づけば枯れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます