【幕間】風前の灯火

 少女は迷わず進んでいく。

 柄に手をかけ、ゆっくりと引き抜く。剥き出しの刀身は月明かりを反射しながら項垂れたボロボロの甲冑の首元に突きつけられる。

 一振りで終わる生命。あわれと思ったことはない。この世界は力あるものが全て。弱きものは存在すら認められない。

「まだ人型を保っているだけ幸せね。さようなら、悪く思わないでね」

 天に掲げ、振り下ろそうとする。しかし、それは阻まれる。

「なにしてるの」

「見ればわかるだろ」

 自身の腕を握りしめる葉凪の眼は至って真剣である。絶望でも、悲しみでもない。どこか決意に満ちた眼。その気になれば簡単に振りほどける程度の力だが……

「いいわ、どういうつもりかは知らないけど」

 愛刀を納める。

「三分。それ以上過ぎれば私が首をはねる。邪魔立てすれば貴方も、ね」

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