【020】助力
「随分虫の息じゃない。あれだけ
未守はこちらにもわかるように
「お前も、邪魔をする気か……」
彼女は再び朝桐の方を見据える。
「あら、甲冑だなんて随分と勇ましいじゃない。それともなに? その貧相な"中身"を護るためかしら」
朝桐は未守に容赦なく剣を振るう。彼女は動じることなく刀身で受けきる。
「口上の前に斬りかかるなんて、よっぽど余裕がないのね。それとも貧相って言って怒ったの? 武士ってもっと気高いものって思っていたのだけれど」
未守は容易く刀を押し返す。
「『蔴風想』……」
朝桐は刀を構える。遠隔、かつ不可視の強力な一撃。今度は竹刀ではなく、刀での攻撃だ。生身の人間が受けていいものじゃない。
「未守!気をつけ……」
目を疑った。未守は目の前でそれを
「へえ、面白い技使うじゃない」
理解ができなかった。そもそもどのような原理で攻撃が行われているのかすら不明であったが、それを未守は初見で弾いた。
「でも殺気、ダダ漏れすぎじゃない? こんなの幼子でも
刀を鞘に納めながら、未守は悪戯げにそう言う。
朝桐は手のひらを天に向ける。それに呼応して、突然鋸来の周囲に大きな手のようなものが現れる。助けようにもボロボロの身体は言うことをきかない。
「葉凪、あいつの能力についてちゃんと理解している?」
「い、いや。それについてはあまり……」
「なら、簡単に説明してあげる」
――居合。彼女が鞘から勢いよく抜刀した瞬間、朝桐の身体は吹き飛び、転がっていく。同時に鋸来の周囲に発生した超常現象は消えていた。
「あいつの能力は『吸収』。力という概念を奪うの。たかが1ヶ月で急に強くなった? 笑わせないで。そんなに人間が単純な訳ないじゃない。大方、さっきのがそれね」
まあ。彼女はそう呟き――
「それでも私の方が強いのだけれど」
「未守ッ、後ろ!」
先ほど吹き飛んだはずの朝桐は既に未守の背後に立っていた。振り下ろされる刀身。完全な死角からやってきた攻撃を彼女は――
「あら、まだ遊び足りないの?」
簡単に受け流す。そして、彼女は左手の人差し指を軽く曲げ一言。
「相手してあげるわ、全力で来なさい」
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