【007】事後報告

「やあ、待っていたよ。お茶をいれるから二人とも先に座っててくれ」

 浅見がいる事務所に到着する。先ほど未守によってバラバラにされた扉はいつの間にか直っていた。

「それで未守さん、進捗はどうだい?」

 お茶を差し出しながら浅見はそう尋ねる。

「どうもこうもないわよ。いつも通りただ切るだけ。変化もなにもないわ」

 二人は簡単な事後報告をし合う。会話に混ざる隙もなく、淡々と話が進んでいく。罰が悪くなり、思わずお茶を口に含むと、それに気づいた浅見がこちらに話を振る。

「おっと、早速仲間外れとは失礼した。君にも事情を説明しないとね。見ただろう? あの怪物を」

「数日前から現れたのよ。しかも、連日。ホント疲れるったら」

 お茶を一口飲んでから未守が口にする。

「観測データからもあれが『Desire』の類いなのは分かるんだけどね、如何いかんせん排除しても発生が止まないのさ」

 浅見はあごを擦りながら首を傾げる。

「僕の見立てだと、蛇口を捻った水道のように、誰かが怪物を垂れ流し続けているんだろうね。解析が済めば閉めるべき蛇口も分かるだろうってことで、未守さんには怪物退治も兼ねて調査して貰ってるところさ」

 数日前からと言っていたが、そんなものが現れていたなんて初耳であった。あんな巨体がいるならどこかしらで情報が入るはずだが。

「そうそう、葉凪くん。君に言い忘れていたことがあってね」

 俯き、考え事をしていた自分に浅見が声をかける。

「君が見た怪物。あれはただの人間には見えないんだよ」

 思わず固まる。あの"恐怖"は瞳を閉じればはっきりと思い出せるくらい色濃く焼き付いている。あれほど印象深いものを見て、忘れるはずがない。

「あら、気づかなかったの? 貴方試されてたのよ。本当に貴方はの人間なのか」

「試すなんて人聞き悪いなあ……」

 そう零しながら浅見は苦笑いをしている。

「類は友を呼ぶっていう訳でもないけど、あれはにしか認識できないんだ。ただし、向こうから干渉はすることができる。まあ、ジャパニーズホラーの怪異みたいなものとでも思ってくれ」

 矢継ぎ早に情報を詰め込まれ、オーバーヒートしそうになったが、とりあえずは把握した。多分。

「報告は以上よ。じゃあ、私はこれで」

 そう言い、スタスタと未守は出ていってしまった。パタンと扉が閉まる音と同時に浅見は安堵あんどのようなため息をつく。

「それで、元凶の正体は検討はついたんですか?」

 浅見はにやりとする。

「大方はね。そこで早速君の出番って訳さ」

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