第2話
8月1日
ダム建設によって湖底に沈むという渓流で、最初で最後の川下りを楽しもうと四人の若者がやってきた。 彼らは消えゆく自然を憂えたり、ダムの必要性について論議したりしながら、カヌーを積んだ二台の車を上流の村落まで走らせた。しかしもとより過疎地帯で観光地というわけでもなく、現地の人々に歓迎のムードはどこにもなかった。川を下った先にある町まで車を搬送してもらえないかと頼むが話はスムーズに進まず、逆に「ダム建設会社の人間か」などと尋ねられ、警戒心をむき出しにされてしまう。それでも金を使ってなんとか頼み込んで車を託し、四人は川へと乗り出していった。
今回のリーダーでもあり、アウトドア派の鯖江の号令で四人が乗った二艘のカヌーは川を下り、急な流れを切り抜けたり、美しく手つかずの自然を楽しんだりした。夜になって河原に上がった彼らは、興奮と満足のなかで一夜を明かしたが、翌日の朝に起きた予想外の事件が総てをぶち壊してしまう。岸辺を散策していた凪子と晴香が、二人組の男から理屈に合わない因縁を吹っ掛けられ、銃を突きつけながら性的な辱めを受けてしまったのだ。この危機を救ったのは背後から男を弓矢で射抜いた鯖江だったが、その一撃によって男はまもなく死んでしまう。
四人は思案する。これを警察に届け出て、本当に正当防衛と認められるのか。悪くすれば、偏見の強い地元の陪審員から不当に重い罪を負わされてしまうかもしれない。真山寧はそれでも正直に届け出るべきだと説くが、鯖江は死体を隠せばまもなくあたりはダムの底に沈み、誰にも知られることなく罪を免れることが出来ると強硬に主張した。逃げた一人にしても、自らのレイプを届け出るとは思えない。
結局鯖江の意見が通って死体を埋めて隠したのだが、そのあと論戦に敗れた上に意に沿わぬ罪を背負って意気消沈した真山が川に落ち、バランスを失ったカヌーも急流にもまれて岩に衝突し砕けてしまう。この事故で真山は行方不明となり、鯖江も足の骨を折る重傷を負うが、一難去った後になって真山が川に落ちた理由で再び意見が分かれる。鯖江は逃げた男が戻ってきて真山を銃で撃ったというが、激しく揺れるカヌーの上で他のものは確認できていなかった。負傷で行動できなくなった鯖江に代わり、凪子は決着をつけようと崖を登っていく。銃で狙っている男は本当にそこに居るのか。もし居たとして、向けられた銃口に向かって何をすれば事態を切り抜けることが出来るのだろうか?
4人を襲った男たちの正体は嵐山若彦と崖島材助、何と江戸時代の人間だ。死んだのは嵐山若彦だ。
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