[六日目 10時40分・ゲーム内]

「ん?」


自分の身体がえらいことになっているにもかかわらず、圭太郎は軽い口調と共に首をひねった。どうしました、と案内役のリズが尋ねる。


「んー、なんかちょっとぴりっとしたような気が……うーん、なんだったんだろう」


そんな軽い言葉で片付けてよい事態ではないのだが、それに気づくことなどできない圭太郎くんはエレベーター内の椅子に座ったまま、胸の前で手を握り合わせた。


「これから討伐に向かう『破竜グリド』は、ものすごく強いんだよね」


イルヴァが脚を組む。


「勝てるのかな?」


「勝つか負けるかじゃないよ。目的は、一発入れること……うん、わかっているよ」


圭太郎は頭をかいた。


「意地というか、八つ当たりというか……とりあえず必要のない行為だってことはわかっている。ゲーム内のことだし、宮内だって、怖い思いはしたけれども無事に帰還した。いま一番正しい選択は、僕もスキルを使って帰ることだと思う。でも……」


「男の子だもんね、ケー君は」


イルヴァはわらった。


「あたしの支援は必要かな?」


「とりあえず、少し離れたところで見ていて。まずは自分の力だけで挑んでみたい。この戦いで大切なのは、僕のプライドだから」


「一撃も入れることができなかったらどうするんですか?」


「その場合は、作戦変更」


リズの問いかけに、少年は小悪党のような笑みを浮かべた。


「プライドなんて邪魔なものは捨てる。限界まで仲間を増やして、どんな卑怯な手を使っても一発ぶちこんでやるよ」

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