[六日目 09時48分・ゲーム内]
「スキル、解除されたよ。話した通り、連続使用はできないから、順に送る形になるけれども……」
姉妹を見る。
「琴音を先におねがい」
琴音は姉の顔を見た。その横顔と視線の先を見て、なにも言わずにうなずく。
「おねがいします。先輩。それから、リズとイルヴァさん。なんだかちゃんとしたお別れができないけれども……」
いいからいいから、とイルヴァは手を振った。
いいですいいです、とリズも手を振る。
琴音は少年の前に立った。
「ありがとうございました。また、現実で」
「うん、またね」
それじゃあお姉ちゃん、わたしは先に、と琴音は手を振った。うん、と詩乃がうなずく。
圭太郎はスキルを使用した。琴音が光に包まれる。そして消える。
帰還はあっけなく終わった。
あまりにあっけないので、イルヴァが首をかしげた。
「これで琴音ちゃんは帰ったの?」
「はい」
横で案内役のリズがうなずいた。
「プレイヤー宮内琴音の帰還を確認しました。現実世界の座標は……」
病院の名前が告げられた。圭太郎と詩乃が顔を見合わせる。
「聞いたことある? 高橋」
「ううん。名前からすると、なんだか大きそうな感じだけれども……まあでも病院にいるのなら安心だね」
そうだね、と宮内詩乃はわらった。
ケー君、と狼系女子のイルヴァが横から声を掛けてきた。
「ちょっと気になることがあるから、奥の方見てくるね。へい、リズっち。一緒にいこうぜ」
リズは通路の奥を見ると、感情のこもらぬ声で返事をした。
「向こうにはなにもないですよ」
「いいから、いいから。おててをつないでお散歩しにいこう」
案内役の手を引くと、イルヴァは迷宮の奥へ消えていった。
少年少女が残される。
二人は向き合う形になった。
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