[六日目 08時20分・ゲーム内]

エレベーターの使用条件となる鍵であるが、結局、圭太郎くんたち自身の力で発見した。


自力で発見できたというのは喜ばしいことではあるのだが、問題は発見した時間である。


配信を見守っている人たちで出されたアンケートの条件は「一時間以内に発見できなかった場合、教えてあげるか?」というもので、大多数の人はこれにイエスの投票を行った。


アンケートは三十分でしめきられ、その時点で視聴者には鍵のありかが明示された。


以下、惜しいところまでいきながらも空振りし、見当違いのところをだらだら探すという面白くない映像を見せつけられ、「これは見つからないな。一時間が経過した時点で見つかるようにしておいてよかったよ」と誰もが思う中、その一時間まであと二分十五秒という時点で発見したのである。


うん、なんというかね。


見ている方としては、別に感謝を期待してわけではないけれども、せっかく用意したヒントは無駄になるし、見つけるのならもっと早く見つけろよ、という気持ちにもなるし、でもおおっぴらに非難するわけにはいかないし、という感じ。


かくして匿名系SNSではちょっとあれな投稿が一時的に増えたわけでが、ともかく四人はエレベーターに乗り込むことができた。


「リズさん。お姉ちゃんは……」


「八十四階から移動していません」


案内役の言葉に、圭太郎がわずかに眉を寄せた。


移動することができないようななにかが立ち塞がっているのか。


それとも、移動することを放棄してしまっているのか。


琴音が八十四階を選んだ。エレベーターがゆっくりと動き出す。到着予定時刻が表示された。


「けっこう時間がかかるね」


約一時間後にこのエレベーターは宮内詩乃のいる八十四階に到着するらしい。


エレベーターの中に設置された椅子に、圭太郎は目をやった。座ろうか、と声を掛け、腰を下ろす。三人も座る。


会話はない。


四人を乗せ、エレベーターはゆっくりと地下迷宮を降りて行った。

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