ショートショート『遠距離』

急に行ったら迷惑かな。


ふとそんな言葉が頭をよぎった。


ダメダメ、本当私のダメな癖、ネガティブなことばかり考えちゃう。


大丈夫、大丈夫、迷惑じゃないよね、こんな可愛い彼女様が会いにきたら彼だって喜んでくれるはず。


彼ったら私がいないと何にもできないんだから、早く行って身の回りのお世話をしてあげないと。


でも、私の代わりにお世話をしてくれる相手ができてたらどうしよう。しばらく会ってないし、向こうの生活ってどんな感じなんだろう。


あ、またネガティブが出てる、もう。


まあ、行ってみたら分かるかな。


彼と過ごした最後の日、こっちにはまだ来るなよとは言われてたけど、無理無理、だって会いたくなっちゃんだもん。ふふん。


向こうで新しい彼女なんか作ってたら許さないんだから。


最後にもう一度部屋を見渡そう。


彼との思い出が詰まったこの部屋を。


えーと、部屋の掃除もしたし、洗い物も残ってない。手紙も書いた、玄関の鍵は・・・別にいっか。


よし、じゃあお父さん、お母さん、行ってきまーす。




「あ、奥さん聞いた?隣の部屋の女の子、自殺ですって。私が以前話しかけた時は彼女、彼に会いに行くってニコニコしてたのよ?」

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