ショートショート『E』

-私はもうすぐ死ぬ。


-思い返せば、私の人生は今に至るまで、平々凡々の生活だった。


-幼少期、小中高、大学ととりわけ語れるような大きなイベントはなく、全てのきっかけとなる選択肢を無視してきたような人生だった。


-就職した会社でも大きな失敗こそしなかったが、大きな成功もしなかった。


-これといった趣味もなく、休日は自室にこもり本ばかりを読む日々。


-友人がいなかったわけではないが、親友と呼べる存在は果たしていただろうか。


-しかしこんな私にも結婚し、一生を添い遂げると誓ってくれた相手がいた。それが今の妻だ。


-彼女は今も私の眠るベットの横で、私の老いた手を握ってくれている。


-そうだ、私には妻がいるじゃないか。子供には恵まれなかったが、こんなつまらない私と一緒にいてくれた彼女がいたじゃないか。


-まったく、こんなことにも気づけないなんてパートナーとして失格だ。


-きっと、今までの私の人生、気づかず見落としてきてしまったものがたくさんあったのだろう。


-もし、またこの人生をやり直せるのなら、もっと上手くやりたいと思う。色々な選択肢を試してみたいと思う。


-そしてまた妻と出会いたいと思う。


-ああ、なんだか眠くなってきた。くそ、こんな時でもつまらない表現しか出てこないな。なんのためにあんなに本を読んでたんだか。


-はは、そんな寂しそうな顔をするな、きっとまた会えるから。きっと。きっと。


-必ず。





「あー終わったー!コレで全エンディングコンプリート!それにしても、このゲーム胸糞悪いエンディングしかないと思ってたけど、ハッピーエンドあったんだ」

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