第22話 女の子をペロンチョしに行く

「最強様に会いたいんだけど、教室知ってる?」

 と俺はネコタソに尋ねた。

 最強様というのは、今朝たまたま廊下の曲がり角でぶつかった女の子である。ぶつかるという時点でアタイ運命感じちゃう。この世界では男は俺だけで、めちゃくちゃモテるのに、あの子だけは俺のことをスニーカーの底にこびりついたウンコでも見るような目で俺を見た。

 そんな目で見られたらアタイの下半身が杉の木みたいに硬くて大きくなっちゃう。ギンギンである。

 本来の俺はスニーカーにこびりつくウンコのように見られるべき人間なのである。昔は、そんな目をされるのは嫌だった。だけどこの世界に来てから、その目が逆に新鮮っていうか、そういう目をした女の子を食べたいデヘヘへへへ、って気持ちになってしまう。

 ペロンチョしてベロベロして、もうあんなことやこんなことをしたい。気持ち悪いって思っていた男に、こんなことをされてるってどういう気持ちだい? って尋ねたい。

 たぶん俺は最低な奴なんだろう。

 過去の世界では俺は否定されて生きていた。

 だけど自分が肯定される世界に来たら、何をやってもいいような気がするっていうか、……俺のことをキモいと思っている奴を食うことで(ごめん、食うなんて下品な言葉を使って)過去の自分すらも肯定したいのだ。

 だからキモデブ、と女の子に言われた時、下半身が屋久島の杉の木みたいに硬くて大きくなってしまったのだ。

 最強様、と呼ばれる女子。

 様、と付けられている。みんなから尊敬されるようなカリスマであるんだろう。そして凛とした表情。あれは自分の意見を変えることをしたことがない真っ直ぐな人間である。←1度しかあったことがないから彼女のことは知らんけど。

 時間を停止させて、その子を犯す。さぞ興奮するんじゃねぇ?

 早く最強様の元へ行きたかった。


「最強様は3年だよ。3年は上の階だよ」

 とネコタソが言った。

「そげんですか」←どこの方言かは不明。

「行くの?」

「必ず生きて戻って来る」

 と無駄に死にフラグを立てておく。

「私も付いて行く」

「なんで付いて来るんだよ」

「いいでしょ。いいでしょ」

 とデレっと俺にまとわり付くようにネコタソが言う。

 顎下を触ってあげると「らぁ〜」と彼女が鳴いた。本当にネコみたい。

「私も付いて行く」

 と後ろから声が聞こえた。

 振り向くとナミが立っていた。

「二人とも付いて来るなよ」

 時間を停止して最強と呼ばれる女子の体をペロンチョするだけなんだから。

「アナタが私に何かを言う資格があるの? さっきあんな事をしたくせに」

 とナミが言って、恥ずかしそうにお尻を手で抑えた。

「私も行く。絶対に行く」

「わかったよ」

 と俺は言った。

「っで、あの変態部長に会って何をするの?」

「ちょっと待て。変態部長?」

「そうだよ。私の入っている部活の部長」

「変態なのか?」

 ポクリとナミが頷いた。

 俺は心の中でガッツポーズをした。なぜかはわからないけど女の子の変態って、それだけで嬉しい。

「それで何をしに行くの?」とナミが尋ねた。

「別に何もしねぇーよ」

「それじゃあ行くのを止めたら?」

「最強様がどんな奴か見に行くんだよ。そんなに行きたくないんなら付いて来なくていいよ」 

 と俺は言って歩き始める。

 最強様に会う理由を聞かれたくなった。本当の理由を言ったらドン引きするじゃん。絶対に言わない。どうせ時間が止まってる世界ですることなんだから。


 俺は脳内でシュミレーションをしながら階段を登った。

 やっぱり狙うのはお尻。スカートを捲ってお尻を美味しくいただく。最高である。

 頭の中でイメージしているだけで自然と舌が動いてしまう。デヘヘへへ。美味しくいただくぜ。

 そして階段を登りきった。後ろには連れの2人も付いて来ていた。

 俺は3年1組と書かれた教室に向かって行く。


 そして教室の前までやって来た。

 廊下側の窓は全て閉まっていた。扉も閉まっている。物音もしない。

「このクラス?」

 と俺はネコタソに尋ねた。

「そうだよ」

「でも誰の喋り声も聞こえないぞ」

 と俺は言って、教室の扉をちょっとだけ開けて中を覗いた。


 教室の中には女子がいた。

 かごめかごめをするように女子達は何かに怯えるように一箇所に集まって円になっていた。

 俺から見ると女の子達は後ろ姿である。誰かを取り囲んでいるみたい。

 異様だった。

 誰を取り囲んでいるんだろうか?

 最強様は? 

 女の子達の隙間から最強様の顔が見えた。彼女と目が合った。ひどく彼女は怯えていた。まるでお化けでも来たみたいに。

 数名の女の子がコチラに気づき、かごめかごめの円を縮めて中心にいる最強様が見えなくなった。


 彼女達は何の遊びをしているんだろう?

 かごめかごめを本当にやっているんだろうか?


 俺は唾液をゴクンと飲んだ。

 女の子達に囲まれていようが時間を停止させてペロンチョしてやる。

 俺はポケットからストップウォッチを取り出した。

 そして時間を停止させる。

『ビービービービー』

 と学校全体に響き渡る甲高い音がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る