第21話 モニタリング

 時間停止の訓練は最高だった。

 女の子達が動かない間に、色んなところを舐めたり、くすぐったり……描写したら、ただのエロ行為を私は1日中しまくった。

 これは訓練なのだ。

 一番、好きだったのは脇を舐めることだった。

 クスぐったいけど時間が止まっているから動けない。顔に出したらダメだから必死になって耐える。

 そんな表情を見るのが堪らなかった。

 

 この訓練で改善することもあった。まずはブザーである。始まりと終わりが同じ音だったので改良してほしい、という意見が出たのだ。何度も時間を停止していると、今が止まっているのが動いているのかわからなくなる生徒が続出したのだ。

 そして回数である。

 みんなが耐えられるのが5回が限度、ということになった。

 5分✖5回=25分。


 そして訓練が終わって、本番の日。

 私は男性に出会ってしまった。学校の曲がり角でドカシャーン。

「痛いやんけ」と私は呟いた。

 廊下の曲がり角で飛び出すなよ、誰やねん、と思った。

「すみません」と野太い声がした。

 そして顔を上げると、そこにいたのは世にも醜い生き物だった。油のような汗が額から溢れ出したデブ。

「最強様、大丈夫ですか?」と隣にいた女の子が私のことを心配する。

 男性が私を見ていた。それだけで吐きそうだった。

「キモデブ」と心の声を私は呟いてしまった。

 言った後に、私は後悔した。ココで男性にトラウマを植えつけてはいけないのだ。

 すぐさま私は立ち上がり、逃げるように3年の教室に向かった。


 3年の教室には黒板の代わりに30台のモニターが付いている。

 私は机に座ってモニターを睨み、イヤホンをコメカミに付けた。

 昔は耳の穴に直接イヤホンを入れていたらしい。だけど今では振動で音を聞くのが支流である。対象物を狙って音を拾うこともできる。そうじゃないと隠しマイクは雑音を拾って、男性が何を喋っているのか聞き取れない。


 さっきの失態のせいで私はため息を付いた。男性にアレルギーがあるのか? 今でもサブイボが立っている。あの醜い生き物と性行為をするぐらいだったら私なら死を選ぶ。

 それでも奴も男である。女の子からはモテていた。

 モニターには隠しカメラの映像が映っている。


 教室に入って来た男性は時間を停止できるストップウォッチを手に取った。

 でも使わなかった。説明書には大きな文字で時間が停止、と書いているのに。

 興味が無いのか?

 奴の膝に女の子が座る。イチャイチャしやがって。そして時間停止を使わず授業が始まる。

 もしかしたらこのまま使われないみたなことがあるだろうか? それはヤバい。

 男性がいるクラスにも国家機関側の人間がいる。

「ストップウォッチを使わせろ」とマイクを使ってソイツに命令をする。

 次の休み時間、ソイツは男性の元へ行った。

 佐々木静香。声が小さいから男性が聞き取れないらしく、ずっと横でモゴモゴ言っている。ようやく気づいた。話を聞いてもらっている。よし、良くやった。そして男性がストップウォッチを手に取った。


 男性は時間を止め、膝に乗っている2人の女の子の胸を触った。

 我々の思惑通り、彼はエロのために停止時間を使っている。

 そして次の時間停止はお尻を堪能していた。

 男性は確実に発情している。

 発情すれば性行為に至るまで、後もう少しである。

 うわぁ、コイツはバカだ。5分しか無いとわかっているのに、お尻を楽しんで5分がすぎている。

 モメている。男性が土下座までしている。

 話を聞いていると女の子はお尻を舐められたことに対して怒っているわけじゃないみたいである。

 自分の方が使われた時間が少なくて怒っているようにも聞こえた。

 どうやら一応は切り抜けたみたいだった。

 それで授業が行われて次の休み時間になる。

 男性は女の子に質問した。隠しマイクが男性の声を拾い、モニタリングしている私まで聞き取ることができた。

「最強様に会いたいんだけど、教室知ってる?」


 えっ? なんで私?


 男性が女の子を2人連れて、教室から出た。

 そして上の階にあるココの教室に向かって来ている。

 とりあえず落ち着こう。

 男性の目的は私である。えっ? なぜ? キモデブって言ったことで恨まれている?

 

「殺されるんか?」と私は呟いた。


「最強様を殺させません」と女の子達が言う。


「とりえずモニターを仕舞って」


 天井から黒板が出て来てモニターが隠れた。

 男性の足音が廊下から聞こえた。

 なんでアイツがココに来んねん。

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