2章 時間停止エチエチ大作戦

第12話 貞操逆転世界が生んだバケモノ

 私の名前は頑固一子と言います。それなりのお金持ちです。3世帯前にメタバース内でアバターの衣装を売って儲けさせていただきました。

 性行為で人間が生まれなくなってから60年以上の月日が流れようとしております。

 人工的に作られた人間は言わばクローンです。同じ遺伝子を持った人間。だけど記憶は引き継いでいない。だから遺伝子は同じでも、まったく別の人間です。

 このクローン技術の欠点は、世代を重ねるごとに遺伝子が弱くなっていくことです。私達の寿命は20年ぐらいしかありません。

 1つだけ長生きするための秘策があります。

 それは妊娠することです。妊娠すればテロメアという細胞に変化が起き、長生きができるらしいのです。妊娠したことによって40歳近くも生きた女性もいるらしいです。

 でも日本には男性がいません。男性のクローンを作ることができず、日本では女性だけになっています。


 私は男性を求めております。心から求めております。そして私は学校に通う事になりました。

 学校というのは教育を与える施設のことらしいです。ココに男性を入学させて恋愛をして性行為をするみたいです。

 財力を使って私は身の回りのお世話をする人間を学校に入学させました。

 私のお世話をしてくれている彼女の名前は世話せわメイと言います。彼女は髪をアップにしています。日本人と海外のハーフらしく、ちょっとエルフっぽい顔立ちをしています。とても美人です。


 学校に入学した私達は魔具研究部に入部しました。

 あまり知られておりませんが、魔具研究部には学校の権力者がいます。この施設を作った人物が生徒にいるのです。最高権力者と言っても過言ではありません。そんな人に好意を抱いていただけたら性行為に近づけるのではないか? そう思って魔具研究部に入部させていただきました。

 やっぱり私が思った通り、同じ部の幼井ナミさんはその人に気に入られ、初性行為者に指名されたみたいです。

 不公平だと私は思います。どうして私じゃなく、あの子が初性行為者なの? そんな風に思ったのです。


 だからお昼休みに私は男性に声をかけました。

「田中太一君、ちょっといいかしら? 田中太一君は全然勉強が追いついてないみたいですけど」と私は言いました。

 勉強を教えてあげますわ、という切り口で行くつもりでした。私の作戦は完璧なモノでした。

「今、お弁当を食べているんだけど」とナミさんが言いました。

 そんなの見ればわかりますわ。

「お弁当食べているところ失礼しますわ」と私は言いました。「委員長として忠告しています。アナタの学力では、この学校に通う資格はございませんわ。放課後、私が勉強を教えてあげますわ」

 と私は言います。

 2人きりになれればコチラのモノです。妊娠させてもらいます。

「大丈夫。私が教えるから」とナミさんが言います。

 ムカつきます。

「アナタに勉強が教えられますの?」と私は尋ねました。


「ちょっとイチコ」と世話メイに腕を引っ張られました。

 彼女は学校の時だけ私にタメ口で喋ります。お世話係だと他の生徒にバレたら、財力でお世話係をクラスに入れていることに反感を買うからです。

「まだダメよ。ナミが最初の性行為者なんだから。まだ私達は関わっちゃダメなのよ」

「そんなの、おかしいですわ」と私は言いました。「そのルールは公平じゃございませんわ」

「最初だけは男の人も緊張するから、そう決まったんでしょ」

「なぜナミさんだけが特別扱いなんですの?」

 腑に落ちませんでした。



 放課後。

 私は部活に行く前に教室に寄りました。

 あの2人が性行為をしているところを確認するためです。

 教室に入ると2人はいません。

 生徒のいない教室。なぜか懐かしいと感じます。もしかしたら何世帯前の記憶が少しだけ残っているのかもしれません。

 誰もいない教室を私は歩きました。そしてノートと教科書を机に広げているのを発見しました。

「勉強をほったらかしてどこに行ったのかしら?」と私は呟きました。


 男性が書いた文字。たぶん手垢もノートには付いているのでしょう。私は男性の机に座りました。なぜか体の奥がモゾッとします。

 ノートを舐めてみたいと私は思いました。

 直接ではございませんが、男性を舐めてみたいと思ったのです。

 誰もいないことを確認して、私は舌を出しました。そしてノートを舐めたのです。


 紙の匂いの奥に、男性の汗の匂いがするような気がします。

 男性が文字を書き込んでいるのを想像します。

 体が火照りました。


 その時、ドンとロッカーから音が聞こえて私はビックリしました。

 ロッカーの中に誰かいるんでしょうか?


 私はロッカーに近づいて行きます。

 そしてロッカーの扉を開けようとした時、


『魔具研究部の部員のみなさま、早く部室に来てください』

 スピーカーから権力者の声が聞こえました。

『魔具研究部の部員のみなさま、早く部室に来てください』

 早く行かなければいけません。私は急いで部室に向かいました。




 魔具研究部。

 赤い絨毯がひかれた部屋。

 高級ソファーには部長である最強女子さいきょうじょし様が座っております。この方が学校を設立した権力者でございます。彼女は短髪で、吊り目で、少し怖い顔をしております。吊り目だけど二重瞼で、体の線が細いのでモデルみたいです。足を組んで両腕を広げて座っております。

「遅い。なにしとんねん」

 と最強女子様が言いました。

 彼女の喋り方は一部の地方で喋っていた方言らしいです。そんな喋り方をする人は今では、その地方に行ってもいません。彼女だけが昔の言葉をあえて使っているのです。

「申し訳ございません」

「まぁ、ええわ」と最強女子様がニヤリと笑って言いました。

 この人がニヤリ、と笑う時の顔は恐ろしいのです。

「これ」と最強女子様が言いました。

 彼女は手に持っていたストップウォッチみたいなモノを私に見せてきます。

 ストップウォッチの実物を見るのは初めてです。

「なんやと思う」

「ストップウォッチですか?」

 と私は答えます。

「違う」と最強女子様が言います。

 でもどこから、どう見てもストップウォッチにしか見えません。

「これはな、時間を止める、魔具時計や」

「時間を止める?」と私が首を傾げる。

 最強女子様がストップウォッチのボタンを押しました。


 ビービービー。

 と甲高い音がなり、そこから表示されていた5分の時間が減っていきます。


「このボタンを押したら5分間だけ時間が止まるねん」

「でも止まってませんよ」

「アホか。ホンマに止まる訳ないやろう。音がなったら生徒達が動きを止めるねん。時間が止まってたら男性は何をすると思う?」

「なにをするんですか?」

「イチコ、時間が止まってるのに動くな。喋るな」

 と急に最強女子様に私は怒られました。

「音がなったら時間が止まる。今は時間が止まってるねんぞ。だから私に何をされても動くな」


 ニヤリと笑いながら最強女子様が私に近づいて来ます。


「今は時間が止まってる。絶対に動くなよ」

 と最強女子様が耳元で囁いてきます。

 そのまま私の耳の穴に彼女は息を吹きかけました。

 ゾクッとしました。動きそうになりました。

 彼女が動くな、というからには動いてはいけません。

 彼女が時間が止まっている、というからには今は時間が止まっていることになっております。

 最高権力者。彼女に嫌われれば学校を辞めさせられる恐れもあります。


 ヌメッとしたものが耳の中に入ってきました。

 ゾクゾク、と体が反応してしまいます。

「お前、今動いた?」

「……」

 私は何も言いません。

 ソファーに座っていた世話メイと目が合います。彼女も魔具研究部に入っております。彼女も動いておりません。佐々木静香さんも身動きしておりません。彼女達も時間が止まった世界にいるのでしょう。

 創作頑張そうさくがんばるさんは、いつも通りヘッドギアーを付けてメタバースの中に入っております。

 あと部活に来ていないのは幼井ナミさんだけみたいです。

「時間が止まったら男性は女子にイタズラをするねん」

 と最強女子様が呟きました。

 そして私のスカートを捲り、パンツに指をかけました。

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