第9話 カホタンが俺の体を隅々まで確認して来る

「えっ、なんで?」

 恥ずかしくてカホタンの方を見ることができない。

 俺は壁を凝視した。

 カホタン、そんな恥ずかしい姿で堂々と男の人がシャワーを浴びているところに入って来たらダメだよ。

「確認するって言ったでしょ?」

「確認?」

「怪我を負ってないかどうか?」

「怪我はしてないです」

「それをこれから確かめるの」

 と彼女が言う。

 カホタンが背後でスポンスポン、とボディーソープの頭を叩いた。


「染みる場所があったら教えてね」

 と彼女は言って、手のひらに付けたボディーソープを背中に付けた。

 ヌルッとした感触。

 それが彼女の細い手のひらで広げられていく。

 

 これは決してエチエチなことじゃございません。だってカホタンも言ってたもん。怪我をしていないかどうかの確認だって。


 俺の具現化系能力が発動してしまった。

 下半身にビール瓶が具現化されてしまう。

 ペットボトルみたいにペコンペコンではない。

 

 いや、これはエチエチな描写をしているわけじゃなくて、ビール瓶の描写をしているだけだからね。


 彼女の手が俺のお腹に回される。

 カホタンが俺に抱きついてお腹をスリスリする。

 そしてカホタンの美しい腕が俺の首に来た。

 首を絞めるように、でも優しく彼女は触った。

 気持ちいですねん。それ気持ちいいですねん。

 彼女は丁寧に俺の体を触って行く。


「コッチ向いて」

 とカホタンが言う。

「無理です」と俺は言った。

 こんなみっともない体をカホタンに見せられない。

 それに具現化系能力が発動してしまっているのだ。


 さっきの3人の女子にはズボンを脱がされてもいい、と思った。

 だけどカホタンに見られるのは恥ずい、と思っている。

 3人に対しては、この日で会うのは最後だから何をされてもいい、と思っていた。

 そうか。これが噂に聞くところのアレだったんだ。好きな女性じゃない方がめちゃくちゃに出来て、そういう行為は気持ちがいい。


 少なからず俺はカホタンに好意を持っていて、みっともない姿を見られるのが恥ずかしいと思っている。

 そんな彼女が俺の足に怪我がないか丁寧に確認していく。


「染みるところない?」

「ないです」と俺が言う。


 そして、ビール瓶以外は確認する場所が無くなってしまったのだ。

 カホタンの腕が俺の足の間から侵入して来る。

 カホタンの手が、ビール瓶を掴んだ。


「なにこれ?」

「いやぁー」と俺は声を出す。

「これが、噂のアレなの?」

「やめて」

 泡が溢れるからビール瓶は振ったらダメだよ。

「大丈夫です。怪我してません」

 と俺は言った。

 ビール瓶の口の部分をカホタンが確認する。

「あぁー、あぁー」

「なに喘いでいるの?」

「そこを触られると、こういう声が出るシステムなんです」

「染みてるの?」

「染みてません」

「もっと、こうしてほしい?」

「ダメです」

「本当はやってほしいんでしょ?」

「そんなにやったら……」

「大丈夫みたいね」

 彼女がビール瓶から手を離した。

 もっとやってほしい。ビール瓶の中の炭酸を全て出してほしい。

 でも俺は彼女に要求できなかった。それどころか恥ずかしくてカホタンの顔が見れない。


 彼女がシャワーを出す。

「怪我はしてないみたいね。良かった。ちゃんと泡を落として来てね」

 彼女が浴室から出て行く。


 これどないするんだよ?

 俺は下半身に具現化されたビール瓶を見た。

 中のビールを出しきらなくては具現化能力が解除されない。

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