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――窓から外へと出たもみじは、ゆきと
その理由は襲撃してきたニッコロ·ロッシを倒すことはもちろん、
だが、合流するにしても場所など事前に打ち合わせなどしていない。
もみじたちは
現在、自分たちは武器を持っていない。
敵と戦うには何よりもまず必要なものは武器だ。
それは、
「では、まずは武器の保管場所へ向かうというわけですね」
そして、二人の盾になるように先頭に立って屋敷内へと歩いて行く。
すぐに後を追うもみじが、そんな老執事に言う。
「ちょっと源じいッ! 前は私が行くから!」
もみじは
源は主であるもみじの提案を拒否する。
主人の盾となるのが従者の役目だと。
「もみじお嬢さまは現在姫野家のご当主でございます。そしてゆきお嬢さまはその妹。雇われている身分として、私が前に出るのは当然のことかと」
「これはもう対魔組織の問題なんだよ!? 姫野家は関係ない! 私とゆきはディヴィジョンズのメンバーなんだから! 悪魔の殲滅は私たちの仕事なのッ! わかったら下がりなさい!」
「いえ、下がりません」
「ぐッ!? なんで言うことを聞かないんだよ!」
何をそこまで意固地になっているんだと、もみじは声をあげた。
そんな彼女の隣を歩くゆきは、源の味方も姉の味方もせずに、ただ二人のことを静観している。
もみじたちに追いつかれないようにか、源は年寄りとは思えない速さで歩き出し、彼女たちに背を向けたまま答える。
「魔の者と戦うのがお嬢さまたちの仕事ならば、お二人を守るのは先代、先々代から仕えているこの老いぼれの役目でございます」
「だからってあなたは普通の人間で私は――」
「あのとき! ……もみじお嬢さまを止められなかったのは、私の一生の不覚でしたッ! 」
源はもみじの言葉をかき消すように声を張り上げた。
それからもみじが
人間を
父の仇を討つために、もみじは危険を冒して自分に魔導具を埋め込んだ。
運よく成功したものの、源は考えてみれば彼女がそういう行動にでるだろうと予想できたのにと、過去を振り返った。
さらにはゆきまでもディヴィジョンズに入ってしまったと、いつもとは別人のように感情を剥き出してしている。
「そのうえお嬢さまたちの危機に何もできぬなど、あの世にいるご主人さまたちに合わす顔がございません!」
「源じい……」
もみじは、その後に続けて言うべき言葉を口にすることができなかった。
“あなたは悪くない”
ただそれだけの短い言葉を伝えてあげられない。
それは彼女が、この老執事のことをよく知っているからだった。
責任感の強い源は、もみじとゆきの父親から彼女たちのことを任されていた。
今でこそ二人の気持ちを受け入れ、ディヴィジョンズのメンバーとして戦うことを受け入れてはいるが、その内心はとても穏やかではいられない。
だからこそ二人へと完璧なサポートを行い、格闘技を教えた。
二人が戦って生き残る確率が少しでも上がるように。
もみじは父が亡くなる前から、いや自分たち姉妹が生まれたときからずっと支えてくれている源に、気休めの言葉などかけられなかったのだ。
「お姉さま……。ここは源じいに甘えさせてもらいましょう。いつものように」
「ゆき……。そうね、源はじいは強いもんね。よし、じゃあ先頭は任せるよ、源じい。何か出てきたらすぐに私に言いなさい」
「かしこまりました」
「それと、死んだら承知しないからね。もし死んだらクビよクビ!」
「お厳しいお言葉……。わかりました。できる限りは――」
「やるっていったらやるんだよ! この命令は絶対なんだからね!」
「……御意」
もみじの無茶な命令に応え、源は目頭を熱くしながら屋敷内へと歩を進めた。
――ニッコロ·ロッシか部屋を火の海にし、鬼頭の指示で部屋から脱出した
まずは散り散りとなって別れた仲間との合流と武器の確保。
長い廊下を走り、虎徹と静は対魔戦用の武器が保管してある場所を目指す。
幸いなことに、彼らが飛び出した部屋は一階で、武器のある場所も同じフロアだ。
屋敷のそこらじゅうから破壊音が聞こえてくるが、その音は二階、または離れたところから響いて来るのもあって二人は安心していたが――。
「下がって虎徹!?」
「うわッ!?」
突然天井が破壊され、そこから車の魔獣――マテリアル·バーサーカーが現れた。
「てっきり姫野もみじかと思ったんだが、ハズレかよ」
現れたマテリアル·バーサーカーの屋根の上には、ニッコロ·ロッシが乗っていた。
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